23.強襲

 討鬼府に警報が鳴り響く。


 「お、鬼の軍勢が討鬼府に向かって来ます。その数、数千!」


 百戦錬磨の隊士達が狼狽えている。討鬼府が鬼に攻められるなど前代未聞の事態だ。


 「とにかく迎撃だ。担当の北門に向かうよ」


 ミコト隊長の言葉に隊士達は直ぐに応え戦闘準備を整える。


 「だ、大丈夫なんでしょうか。数千なんて」


 「大丈夫。こんな時のための四聖塔よ」


 動揺する俺にヒメさんがはっきりと断言する。東西南北に聳え立つ4つの塔。4から7番隊が常駐する四聖塔は討鬼府全体を覆う強力な結界を張り守っている。


 「多くの隊が鬼道対応で不在だから討伐は大変かもしれないけど、結界を利用して落ち着いて対処しましょう」


 北門から出ると1角から3角。小から大。大量の鬼がこちらに向かってくるのが見える。10番隊隊士各々の妖刀の力で迎撃する。



 戦端が開いてからしばらくして北塔から煙が上がった。


 「なんで塔から煙が…」


 休憩の為、一旦門内に戻っていた俺や10番隊隊士は慌てて北塔に向かった。塔には鎧を着込んだ鬼が大勢攻め入っていた。


 「なんで!どこから!」


 「ヒカリ!落ち着きなさい!この鬼たちは…、強い」


 ヒメさんの言う通り、外の鬼達とは雰囲気が違う。


 『鎧鬼か。武具を身に付けて戦士気取りの奴等だな。言うなれば鬼討士に近い戦い方をするぞ。変わってやろうか?』


 ジャックの提案に思わず乗りたくなる。センを握る手に力が入る。激戦が繰り広げられた。

 

 「《開放》千刃牙狼!」


 鎧鬼は強く《憑依》を使っても押されたので、堪らず《開放》したのだがそれでも鎧鬼を倒すことは出来なかった。センの無数の刃を的確にいなし、炎を纏った刀で斬りかかってくる。他の鎧鬼達も様々な力で隊士と戦っている。これが3角の特殊能力か。他の隊士は鎧鬼を倒しているが数が多い。狭い建物内というのも条件が悪いようだ。《開放》の様な大技を使えないでいる。


 「うわッ」


 余所見をしていたら目の前の鎧鬼に斬り付けられる。慌ててセンで防いだがすごい力で壁に叩け付けられた。


 「ヒカリ!」


 ヒメさんが数体の鎧鬼を相手にしながらこちらを心配そうに気に掛ける。


 「オレ様、参上!」


 『か、勝手に…』


 どうやら相当消耗していたようだ。ジャックに身体の主導権を奪われてしまった。


 「折角だしこの刀使ってみるか」


 センを鞘に納め、腰に差さっていたもう1本の刀を抜く。


 「ほら。掛かってこい」


 鎧鬼に手招きする。鎧鬼は怒っているのか刀の炎を膨れ上がらせ斬り掛かってきた。それをジャックは簡単に袈裟斬りにする。


 「悪くない切味だな」


 首を持ち、鎧鬼に生えている角を毟り取り口に運ぶ。


 「なかなかだな。さてと次だ」


 角を取り終えた鎧鬼を投げ捨て違う鬼の方を向く。あれだけ響いていた喧騒が静かになっていた。

 その時、ミコト隊長等増援が来てくれた。


 「おい!オレ様の獲物だぞ。横取りするな」


 あっという間に鎧鬼達が倒されていく。上階に向かった俺達が見たのは衝撃の光景だった。

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