17.鬼道※ハヤマ視点
佐野の奴め!気に入らん。
「隊長会に実力不確かな者を参加させ、剰え自分の隊に捻じ込むとは!何様のつもりなのだ」
まったくです。と副隊長が頷く。だが敢えて私は、声を上げずに一睨みで済ませてやったよと言うと副隊長は内心冷や汗をかいていますよ。しかしさすが隊長、それだけで済ますとは心が広い、広すぎると言った。周りの隊士がまったくです。と頷く。
番号を譲ってやったから調子に乗っているのか。私の優しさも罪だな。
家を通さない数取りという野蛮な行為に私は抗議したのだが、家も鳳家も何も動かなかった。他の家も佐野には甘い気がする。忌々しい。
ここは我が24番隊が担当する地区。鬼道の反応有りとの事で出向いてきた。任務には隊長参加必須などという古い規則はいつか必ず撤廃させてやる。
隊士2人に鬼退治を任せているがそろそろ終わるころだろうか。無駄な時間だな。
ドン!大きな音が響く。
「何事だ!」
鬼道が閉じる処か広がっていると報告が来た。鬼道に向かう。その間もドン、ドンと音がしてついには何かが壊れる音と衝撃が発生した。
軌道の所には大きな鬼?が立っていた。鬼なのか?私はあんな大きな鬼は見たことが無い。3、いや4mはあるか。筋肉隆々でその頭には角が…、4本だと!3本ですら滅多にいないのだぞ?
「ああ、せめえったらねえな。ここが人間界か。で、お前らが俺達の敵ってわけだ」
鬼が流暢に喋っている?何から何まで異常だ。
「俺は羅切だ。お前等の名前は…いいか。強かったら聞いてやる」
なんと生意気な!私は《憑依》する。
「波山!燃やせ!!」
波山の炎は幻の炎。実際には燃えないが決して消えない炎に慌てているところを斬る。それで終わりだ。
この異常な鬼を討てば上も私を高く評価するだろう。佐野にも何かできるかも知れない。
いざ角を斬ろうと近づいたら、逆に斬られた。なん、だ、…と。
「なんだいこの火は?熱くもなんともない。意味あるのか」
私が斬られたことに驚いて駆け付けた隊士も斬られる。傷が深い、意識が薄れるがこのままでは全滅だ。なにか手を打たねば。この状況で《開放》は逆に危険だ。
「波山!飛べ!!!」
《具現》した波山が私を咥え、斬られた隊士2人を掴んで飛び立った。
「皆も一旦引け!」
残る隊士に命令して波山が消えないように意識を集中しようとするが、傷の痛みがそれを邪魔する。痛い。私が覚えているのはここまでだった。
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