15.天才

 「やあ。タケル君。タマモ君との会話聞こえちゃったかい?」


 「会話?玉藻さんとも鬼の話をしていたんですか?ミコトさん、見てくださいよ。これ僕の最新鬼気測定器なんですけど彼に反応してるんです!キミ、今の気分は?体の調子は?時間あるかい?僕の実験室まで来て欲しいんだけど」


 手に持った箱のような物を佐野隊長に見せたあと、眼鏡をクイクイさせながらすごい早口でグイグイくる。怖い。僕より小さいのに。会議の時に聞いた情報を頭に浮かべる。確か25番隊隊長菓子谷武さんといったはず。


 「まあまあ。タケル君、彼怯えているから落ち着いて。深呼吸。深呼吸。それに彼はこれから11番隊で大切な用があるから時間はないよ。またの機会にしてね」


 スーハーと深呼吸してから、彼の協力があればアレを試せるかいやあっちを優先して…。と、ブツブツ自分の世界に入ってしまっている。


 「それじゃ、またね」


 佐野隊長はそんな菓子谷さんを置いて歩き出した。俺も慌ててついて行く。


 「うーん。直近で危険なのはタマモ君よりもタケル君かもしれないな。彼の探求心は異常の域だからね。悪い子ではないんだけど」


 11番隊舎に向かう道なり、菓子谷さんの人となりを教えてくれた。言わば狂科学者。最年少で討鬼士そして隊長になった天才。数々の画期的な術や道具を生み出したが失敗も多い。実験室の爆破等。

 やっかいな人に目を付けられてしまった。


 「タケル君のことは置いておいて、まずは入隊祝いをしないと。今回はどんなご馳走かな。隊の皆を紹介しないとね」


 佐野隊長のお祝い重視方針は絶対みたいだ。気になる問題は多過ぎて俺の頭では処理しきれない。全部先送りにするしかない。


 11番隊舎に戻るとパーンとクラッカーが鳴り響く。

 

 「おめでとう!!」


 11番隊に所属する討鬼士の皆さんが出迎えてくれた。


 「正式に11番隊隊士になったんだ。これからはミコトと呼んでね」

 

 「私もヒメでいいわ」


 隊長と副隊長からのお言葉。甘えさせてもらおうか。

 隊士の皆さんとの自己紹介も済、会話が盛り上がる。皆良い人みたいだ。

 宴もたけなわ入隊祝賀会が終わり部屋に戻る

 この平和がずっと続けばいいのにと眠りについた。

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