11.開放
次はいよいよ
だが、《開放》で躓く。《開放》する為には強力な霊力と強靭な肉体が必要らしい。俺、数日前までただの学生だったんだけどなかなか無茶振りがすぎるのでは。隊長は大丈夫さと軽く言う。
「ジュウロウさんが見せてくれた通り、まず《憑依》して刀に力を込める。上手くいけば《開放》だよ」
実に簡単な説明。それで出来ていれば皆、討鬼士なのではないだろうか。何事も実践あるのみとのありがたいお言葉。とりあえずやってみる。
「はあああーーー」
はあああーーーとか言っちゃったんだけど大丈夫だろうか。佐野隊長はいつも笑顔なので分からないが、チラっと大槻さんを見ると口元を手で押さえて顔を背けている。顔が赤くなる。ダメだ、集中!刀に力を込める。どんどん力が吸われていく。こ、これは。最初に《憑依》した感覚が!《憑依》を解いて脱力する。
「霊力を使い切った感覚、ちゃんと覚えていたみたいだね。大変よろしい」
佐野隊長は褒めてくれたが、肝心の《開放》は出来なかった。刀を見つめる。あの無限に力を吸われる感覚。少し怖い。すると刀からセンが俺を心配している感情が届いた気がした。いやきっとそうだ。センを心配させる訳にはいかない。大槻さんにコツを聞くことにする。
「そうね。霊力は使い切るくらい消耗すると総量が増えることがあるわ。慌てず回復したら今の手順を繰り返してみて。きっといつか出来る」
継続訓練が一番らしい。頑張るぞ!
それから数日。いつものように力を込めていると刀が輝き出した。頭の中でセンが言葉を伝えようとしているな映像が。何々、集中すると聞こえた。
声に出す。
「《開放》!千刃牙狼!!!」
千疋狼。獲物を狙う為、肩車してまで追い立てる狼。その特性の表れか刀には牙の様な刃が生え、刀を動かすと無数の刀の残像が浮かぶ。
「アレに向かって刀を振ってみて!」
訓練場にある鬼を模した像。10mは先にあるそれに刀を振るう。刀の軌跡に生じた残像が連なりながら伸び、像を切り裂く。実態のある残像。俺は自分の行った結果に驚きながら《開放》を解いた。
「遠距離攻撃。結界で強化された像を両断する威力。合格だね。出来たばかりでなんだけど《開放》の形は1つじゃない。何がしたいか妖に伝えるとそれに応えてくれることがある。何事も想像力さ。修練を怠らないこと」
佐野隊長はいつにもましてにこにこだ。
肩で息をしながら隊長に頷く。すごく苦しい。
「よかった。明日は隊長会なんだよ。そこで君を討鬼士に推薦しようと思う。はい、これ」
佐野隊長は一振りの刀を差し出してきた。
「ジャック君用の刀だよ。鬼は妖刀を振ることが出来ない。体一貫で戦うのは君の体に悪影響があるかもしれないから。持っていて損無しさ」
たしか妖刀を2本差しているのは隊長の証でもある。なぜか佐野隊長は1本だけだが。妖刀でなければ大丈夫なのだろうか。なんだか嫌な予感がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます