7.妖刀

 まずは討鬼府に向かうとする。まだ部外者の俺は目隠しをされ、手を引かれて歩く。妙な浮遊感や不思議な感覚の後、着いたと言われた。


 「鬼が現われた所にすぐ向かわねばならないだろう。秘密の道が国中に繋がっているのさ」


 なんて羨ましい。一般公開して欲しいと言ったら残念ながら霊力の無い人は体が負荷に耐えられないと言われた。はじけ飛ぶと。怖い。


 東西南北に大きな塔と立派な壁その中はたくさんの建物がある。小さな街くらいあるんじゃないかな。すごい。壁にある大きな門に着いた。


 「11番隊任務完了。隊舎に戻る」


 大槻さんが門番にそう告げると大きな門が開く。門をくぐったらあら不思議建物の中だ。


 「これだけ広いと移動も大変だからね。門や扉には仕掛けがあるのさ」


 佐野隊長が笑顔で教えてくれた。ここは11番隊隊舎の玄関らしい。すごく便利。


 「隊長。お疲れ様でした」


 黒髪の美女が出迎えてくれた。今まで派手な髪の人ばかりだったので新鮮だ。


 「ヤエ君。ご苦労様。彼が伝えていたヒカリ君だ」


 「初めまして。11番隊副隊長の久信田八重です」


 「原川光です。よろしくお願いします」


 軽く挨拶をする。道中組織の説明をしてもらったが討鬼隊は基本隊長とその補佐に副隊長2人、隊員10人くらいで構成されているとのこと。


 「ヒメもお疲れ様。隊長との任務は楽しかったかしら」


 なんだか言葉に棘がある。笑顔なのに目は笑っていないような。


 「任務に楽しさを求めていないわ。ヤエもお疲れ様。1日隊長と会えなくて残念だったわね」


 昨日はさすがに遅い時間になってしまったので1泊してから討鬼府に来たのだが、なんだか大槻さんの言い方が嫌味たらしく聞こえるのは気のせいだろうか。ギギギと睨み合っている。大丈夫か11番隊。


 「ヤエ君、鍛冶局に武器庫の使用許可はとれたかい?」


 まったく気にせず聞く佐野隊長。さすがだ。


 「もちろんです!」


 「それじゃ行こうか」


 武器庫なるところに向かうが当然の様に久信田さんもついてくる。副隊長2人が睨み合いながら歩くが前を見てないで大丈夫なのだろうか。

 他の隊員とは分かれ総勢4人で隊舎の扉からでる。久信田さんが手をかざしてから扉を開けてくれた。扉を出るとやはり建物の中。受付の人に軽く言葉を交わして部屋に入る。ずらっと刀が並んでいる壮観だ。


 「ここが武器庫。妖刀などの保管場所さ」


 佐野隊長が手を広げ、楽しそうに言う。そして分厚い本を渡してきた。


 「それが刀の目録さ。なにか希望はあるかい」

 

 本を開いても書いてある文字からして達筆過ぎて読むことすらできない。困惑していると大槻さんが佐野隊長に声をかけた。


 「いきなり妖刀を選ばせるのですか?」


 「妖刀がなきゃ討鬼士になれないからね」


 「当然です!」


 久信田さんは相変わらずはやい。


 「ええと。まずは妖を見てもらおうかしら。でてきてお蚕さま」


 大槻さんの手の平に大きな芋虫が現われる。

 

 「この子が私の刀に宿る蚕の妖。妖刀は常に所持するのだから自分の好きな物や動物にした方がいいわよ。あとは前も言ったけど体に影響もあるから。気にしてたわよね」


 そうだ髪や目の色が変わるんだった。どうしよう。あまり奇抜な色にはなりたくない。


 「ええと。犬が好きなんですけどありますか。なるべく色も茶色で」


 「なるほど。これなんてどうだろうか。犬じゃなくて狼だけど」


 しばらく目録を眺めてから佐野隊長が指差した。

なになに、千疋狼。読めないので大槻さんに教えてもらった。え、肩車する狼。なんだか可愛い気がする。


 「あの、さっきの蚕みたいに見てみることはできますか」


 俺が言うと久信田さんが刀を持ってきてくれた。はやい。きっとまた便利な機能があるのだろう。


 「ヒカリ君くらい霊力があれば《具現》できると思う。刀を握って千疋狼と呼んでみて」


 言われて刀を持つ。別に刀を抜く必要なないらしい。


 「千疋狼!」


 ちょっとかっこつけて言ってみた。すると目の前にはお座りした狼が。千疋狼、君に決めた!

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