6.現状整理
え。なんで。あれだけ頭の中で呼びかけたのに応えなかったやつが隊長の一声で。おい!
「名前で呼ばれなかったからな。どいつもこいつも…」
そんな理由で。というか勝手に喋るな。他は何ともないのに口だけが自分の意思で動かせないのがとても怖い。頭の中で言い争う。少し経ってから佐野隊長に声をかけられた。
「もういいかい?天邪鬼、君は鬼なんだよね。だけど鬼と戦っていた。何故だい?」
「あ?あんな奴らの角でも喰えば少しは力の足しになる。だから体の慣らしついでにちゃちゃっとな」
そんなにふんぞり返って偉そうに言うな。あれ、体の主導権が奪われている。駄目だ。これは俺の体だ。力を込めて体を丸めようとすると少し抵抗があったが動かせた。
『チッ。意識があるとうまく動かせないか』
いや俺の体なんだって。
「君は鬼と敵対していると考えていいのかな。今は力を失っている?人間に害するつもりはあるのかい?」
今現在害してます!人の体を勝手に動かそうとしてます!頭の中で声がして気持ち悪いです!
「人間なんて喰ったところでたいして食いでがあるわけでなし。どうなんだい。最近2本角か、3本角の大物は地上に出てきてるかい?」
さっきは小物ばかりでなー。と頭の中で独り言ちている。
笑顔で糸目の佐野隊長の開きこちらを見つめる。コワイ。
「ふむ。嘘は言ってないかな。彼の体から出る気は?」
「オレ様はこいつと契約した。この体はオレ様の物だ」
あれで!確かに言ったけど。あんな緊急事態でそんな大事なことを決めるなんて詐欺だ。
「その話はヒメ君から聞いたけどね。君がどんなに強力な鬼か知らないがそんな口約束で体を奪うなんてできるのかい?現に上手くいってないように見えるよ」
『ぐぐぐ、オレ様が悪いんじゃない。こいつが思ったより霊力が強いせいで…』
こいつこいつって俺は光だ!
『そうか。ヒカリ。よろしくな』
軽い。どうやら天邪鬼は名前に強いこだわりがあるみたいだ。だが散々振り回されて若干イラっとしていたのでつい言ってしまった。天邪鬼って言い辛いんだよ。お前はジャックだ!
『ジャック?ジャック…。渾名ってのも悪くないな。いいぜ。オレ様をジャックと呼ぶのを許してやる』
機嫌が良い。嫌がらせのつもりで言ったのでなんだか気まずくなってしまう。
「ヒカリからジャックって渾名を貰った。お前達も呼ぶことを許してやる」
だから勝手に喋らないでくれ。そんな嬉しそうに言われると止めることも出来ない。
「そうか。ジャック君。体の主導権は原川君にありそうだね。提案なんだが僕たちと一緒に鬼と戦ってみる気はないかい?」
「いいぜ」
即答かよ!
『力を取り戻せばこの体も完全にオレ様のものになるかもしれないしな』
佐野隊長!こいつしれっと邪悪なこと考えています!ダメです。信用しちゃダメなやつです!
『冗談だよ。ジョーダン。一緒に戦おうぜ、ヒカリ』
「そうか。ありがたい。最近鬼道の発生が多い。強力な戦力は助かる。原川君、もちろん君の意見をないがしろにする気はない。メリットはあるよ。討鬼府に行ったらいろいろ上の方がうるさく言うだろうが共に戦う意思があるのなら言いくるめられるだろう。ジャック君が戦うということは君も戦うことになる。僕達11番隊の総力をあげて君を鍛えるつもりだ。そうするときっと君の霊力はずっと向上する。ジャックくんを追い出せるかもしれない」
にこにこと佐野隊長が矢継ぎ早に説明する。どちらにせよ俺にはそんなに選択肢はないだろう。こんなに便宜を図ってくれる11番隊のお世話になったほうが良い。
「よろしくお願いします」
久しぶりに口に出して喋った。本当に体を取り戻せるのだろうか。ジャックには負けられない。頑張らねば!
「よし!目指せ討鬼士だ」
佐野隊長はとても楽しそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます