4.討鬼士※ヒメ視点

 目の前にいるのはいったいなんなのか。見た目は少年のようだが漂う気配が尋常ではない。そしてその行動が信じられない。鬼の角を折って食べている?


 「お蚕さま、お願い。縛り糸!」


 刀に宿るお蚕さまに呼びかけ力を開放する。縛り糸は拘束術でも強い方だ。糸は時間が経つほど固くなり鋼鉄にも勝る。これだけ巻き付けて逃れた鬼はいない。その自慢の糸があっさりと切り裂かれた。そんな馬鹿な。少年の頭に角が生えている。やはり鬼なのか。


 「ハチ、モモタリ、気を付けて!」


 左右の隊員に声をかける。相手は強力な鬼だと思った方がいい。鬼からの威圧が強くなる。《開放》するべきか。刀に力を込める。

 一触即発。その時、目の前に隊長がいた。こんな時でも軽薄な笑顔は変わらない。鬼が倒れる。足元に隊長のオロチくんが巻き付いている。さすが仕事が早い。


 「隊長。アレはいったい」


 ミコト隊長は11番隊隊長。序列11位だ。何か知っているかもしれない。

 

 「どうやら憑かれてしまったようだね」


 しげしげと少年を見つめている。鬼の憑依。聞いたことがない。鬼は人を喰らうモノ。


 「だいたいおかしいですよ。なんでこの少年は結界の中にいたんですか。普通の恰好ですよね。討鬼士ではないでしょうし、陰陽師とも思えない。」


 変わり者揃いの討鬼士とはいえ、さすがにジャージで戦場にはこないだろう。陰陽師なら尚更。


 「彼の中から強い霊力を感じる。天然ものだね」


 にこにこ。満面の笑み。隊長は楽しそうだ。

 さっきまで生えていた角はきれいに消えていた。

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