第266話 大いなる意思5
「異端者がぁっ!」
「うぉ……元気だな」
結構、大きめの隕石を落したつもりだったんだけど、大いなる意思は元気に瓦礫の中から一直線に飛んできた。すぐにリヴァイアサンとヒュドラが妨害するために動き出してくれたけど、今は大いなる意思から奪った魔法が幾つもあるので使ってみるか。
「ぐっ!? これは!?」
「お前の魔法だろ」
結界のような魔法に加えて、鎖を出現させて相手を拘束する魔法に、対象の魔力をその場に留める魔法を加える。大いなる意思の動きが止まったら、そこに追加で魔法をかけていく。俺が奪った魔法は、大いなる意思の全体から見ても1%にも遠く及ばない数でしかないと思うが、俺からすれば手数が数倍に増えたも同然。
動けなくなった大いなる意思はすぐさま他の魔法で拘束から抜け出そうとするが、俺の背後から顔をだしたウロボロスが魔力弾を放ち拘束ごと吹き飛ばした。
「……俺が折角頑張って拘束したのに」
「拘束など攻撃する為だろう」
ウロボロスのこのマイペースさ、見習いたいね。
まぁ、俺が拘束したところで有効な攻撃ができないのは事実。精々が魔法を奪うくらいだが、ちまちまと奪っても大いなる意思が持っている総量からすれば微々たるもの。ほんの少しでも奪われるのが嫌な大いなる意思は怒っているが、そこまでの被害にはなっていないはずだ。
『見つけました。大いなる意思と世界の繋がり』
「見つけたのか!?」
思ったより早かったな。けど、それが見つかったのならば切り離すだけで、大いなる意思はこの世界から拒絶されるようになるはず。そうなれば、今のように無敵でも不死身でもなくなる……はず?
「それで、なにが大いなる意思と世界を繋いでいるんだ?」
『貴方自身です』
「……なんて?」
『ライト・リースターが世界と大いなる意思、唯一の繋がりです』
えーっと……頭痛くなってきた。
でも、よくよく考えてみると当然かもしれない。だって傀儡だったドロローサやニズベルグだってもう存在しないんだから、残っているのは本来傀儡にしようとしていた俺の身体だけだろう。
「どうすりゃいいのさ……」
世界と大いなる意思の繋がりを断たなければ勝つことはできない。だが、世界と大いなる意思の繋がりを断つには、俺が世界から消えなければならない。
俺の犠牲だけで世界が救えると思えば安いかもしれないが、やっぱり死ぬのは誰だって怖いだろう。
『方法はあります』
「なんの?」
『貴方が死なずに済む方法です』
心を読まれたらしい。今の流れなら誰もが読めるかもしれないが、なんとなく世界樹に言われると本当に『読心』を使われた気分になってくる。
『貴方が、大いなる意思を取り込めばいいのです』
「取り込む?」
『今の大いなる意思と貴方の関係は光と影。大いなる意思という光によって世界に投影された影が、貴方の存在です。つまり、光と影の位置を反対にしてしまえば、それだけで大いなる意思は存在できなくなります』
いや、その理論は矛盾してないか?
光と影の位置を入れ替えたって、大いなる意思は存在し続けるだろう。だって影の俺が、現状こうやって存在しているのだから。
『無論、ただ入れ替えるだけでは意味がありません。だから取り込むのです』
「はいはい、おっけー……大いなる意思の存在ごと俺が上回れってことね」
光と影が入れ替わるだけでは意味はないが、光になれば影を飲み込むことができる。簡単に言うとこんな所か。つまり、俺が今からしなきゃいけないのは、ひたすらに大いなる意思から魔法を奪い続け、俺より大いなる意思を弱くすること。そうすれば、俺は、大いなる意思の存在そのものにようやく手が届くようになる。
「全部奪えばいいんだろ!」
『そういうことです』
ならシンプルでわかりやすい!
魔法も存在も、全てを奪い去って引導を渡してやればいいだけだ!
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