第265話 大いなる意思4
「ふぅ……」
実のところ、身体の内側にある邪神の権能である『簒奪』は、暴れ狂う炎のように制御が難しい。本来、神が扱う力である権能を人間が使っていると考えれば納得できてしまことだが、俺が使うには少し魂の器が足りないのかもしれない。
まぁ、色々と文句やら考察やらは浮かんでくるが、今はやれることをやるだけだ。
「このトカゲ共が!」
「うぉッ!? おいこっちに飛んできたぞ!」
「知らん」
あっちはあっちで、協力してるのか競争してるのか知らないけど、わちゃわちゃやっている。まぁ、その統率の取れていない攻撃が逆に大いなる意思を困惑させているような気もするが。
大いなる意思は『未来視』でなんとかあの状況を乗り切っているように見えるが、それ以外にも魔法を沢山使っていそうだ。あれでは、たとえ『未来視』を奪ったところでそこまで効果があるようには思えない。
『……これだけの魔法陣で、なにを奪うつもりなんですか?』
「そりゃあ、力だよ」
大いなる意思には既に名前がないのだから、奪えるものは力だけだ。そして、力を全て奪ってしまえば大いなる意思は倒せる。異世界の邪神がそうしたように、他の世界に逃げることしかできない状況になる。もっとも、俺はそこから逃がすつもりなんてないが。
「よし、とりあえずやってみるか!」
『じゃあ私がサポートします!』
「頼む」
大いなる意思の頭上に巨大な魔法陣を作り出し、そこから間接的に大いなる意思から伸びる糸を複数本掴む。数で言うと、100以上は掴んでいるかもしれない。あとはそれを、魔力で引っ張るだけ!
「ぐぅっ!?」
『軽いのから順番に切りなさいよ!』
「わ、わかってる!」
同時に多くの糸を引っ張ったが、大いなる意思にとって重要な魔法はやはり重い。軽いものは簡単に奪えているが、恐らく『未来視』であろう糸なんかは奪えていない。
「ぐっ!? また私の力を!」
「おっと、盟友の安全を守るのは我の役目よ!」
俺が『簒奪』を使っていることに気が付いた大いなる意思が、こちらに向かって魔法を放ってきたがリヴァイアサンが身体で止めてくれた。最初は鬱陶しい奴だと思っていたけど、やっぱりリヴァイアサンは良い奴だと思う。
「ぐがぁっ!?」
「おいおい、どうした神様よぉ」
「おのれっ!」
身体から魔法を奪われていくというのは、どういう感覚なのだろうか。大いなる意思は痛みを感じているような様子はないが、自身の存在が引き裂かれているも同然のはずだ。
まぁ、大いなる意思が抵抗しようとしても、今みたいにヒュドラに吹き飛ばされたりするんだけども。
「ガァッ!」
「ぐっ!? バハムートぉ!」
バハムートが操る闇の奔流が大いなる意思を飲み込んだことで、何故か糸が全体的に軽くなった。もしかすると、大いなる意思はある程度のことだけど抵抗していたのかもしれない。
『今です!』
「わかってる!」
抵抗が弱まった隙に、掴まえていた糸を次々に奪っていく。その度に、俺の身体の内側にどんどんと魔法が累積されているのだが、抽象的な表現になるが全能感が湧いて来る感じがする。神の力を奪っているんだから、当然かもしれないけど。
「う、奪われていく……私の力が……また、私は簒奪者に敗北するのかっ!?」
「惨めだな、神を僭称しておいて」
おー、ウロボロスって結構煽るよな。
闇の奔流から抜け出した大いなる意思に対して、すかさずウロボロスが魔力弾を叩きつけていた。触れたら死ぬとか言われていた魔力弾を、寸でのところで止めている大いなる意思だけど、多分防いでいる魔法を俺が掴んでいる。
「悪いな」
「なっ!?」
結界系の魔法を使っていたんだろうが、最後の一本はそいつだ。
俺が思い切り引っ張ったのと同時に、大いなる意思を守っていた魔法が消え去り、ウロボロスの無限を内包した魔力弾が直撃した。
「『落星』」
魔力弾を受けて吹き飛ばされていった大いなる意思に、俺が『落星』を使って追撃する。ここまでやれば、大いなる意思も大人しくなるだろう。後は、世界との繋がりとやらを切るだけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます