第264話 大いなる意思3
奪った魔法の数が10を超えた当たりで、大いなる意思の身体にリヴァイアサンの水流が直撃した。性格が悪いと言われるかもしれないが、俺は大いなる意思が優先的に使っている固有魔法から率先して奪っている。リヴァイアサンの水流を見て、咄嗟に発動しようとしたのは直前に俺が奪った魔法だった。
「おのれっ!?」
「フハハハハハッ!」
普通の人体なら水流を受けただけで身体が粉々に砕け散るレベルだと思うが、大いなる意思は元気に飛び出してきた。そんでもってこちらを睨みつけるように視線を向けて、飛び出そうとした瞬間にヒュドラの頭の一つが嚙みついた。
「邪魔をするな!」
「それはできんな!」
両腕でヒュドラの牙を掴んで止めているのが見えたが、次の瞬間にはヒュドラの口からビームが発射された。あれだけの攻撃を受けて全く死にそうにない大いなる意思に、俺は少し辟易としてきたぞ。
「『落星』!」
「ライト」
「はいはい」
完全に怒り狂っている大いなる意思が発動した『落星』は、最初とは規模が違いそうだ。それをすぐに感じ取ったバハムートをこちらに視線を向けてきた。まぁ、俺も死ぬのはごめんなので『簒奪』で大いなる意思の糸を掴む。
「重い!」
「知らん。早く奪え」
そりゃあ他人から魔法を奪うのに、糸を引っ張る力が必要とかわからんだろうけども。『落星』を発動している大いなる意思も無防備な状態になっているのに、リヴァイアサン、ヒュドラ、ウロボロスの攻撃を受けてもびくともしていないのは、なにか絡繰りがありそうだけども、今は『落星』を奪うことの方が優先か。
10回以上魔法を奪ってようやく、なんとなくだが『簒奪』の感覚が掴めてきた。奪いやすい魔法と奪いにくい魔法があると思っていたが、どうやら本人が抵抗する意思があるかどうかっぽい。大いなる意思が重要だと思う魔法は糸が重く、軽く見ている魔法は糸が軽い。そんな感じ。まぁ、関係なく奪うんだけども。
「なっ!?」
「はい『光線』!」
「ぐっ!?」
「我も続くぞ!」
宣言はいらない。というか、俺が攻撃目的で放った『光線』は大いなる意思の片手に防がれたけど、続いたリヴァイアサンの水流は大いなる意思も堪えられずに吹き飛ばされている。威力やばい。
ただ、ちまちま魔法を奪いながら攻撃しているが、大いなる意思は全く倒れるような気配もなく次々と違う魔法を撃ってくる。
「なにかあるのか?」
『もしかしたら、世界と結びつくことで自身の存在を定義しているのかもしれません』
「……つまり?」
難解すぎて何言ってるかわからないんだが。
『この世界が存在する限り、大いなる意思は滅びないようにしているかもしれないという話です』
「マズくない?」
「厄介だな」
「バハムートはなんか手がある?」
「ない」
それだけ言い残して、リヴァイアサンたちの方へと加勢に向かってしまった。
『世界に結び付くなんて方法、私にも想像がつきません』
「じゃあ無理じゃない?」
『……もし、それを貴方が奪えたら?』
「ですよね」
やるしかないだろう。本当に大いなる意思が滅びないのならば、俺たちがジリ貧でそのうち負ける。上位龍種であろうとも、限界は存在するのだから。俺の『簒奪』で魔法を奪ったところで焼け石に水で、次々と新しい魔法を使って来るんだからどうしようもない。
『大いなる意思の根源を私が探ります』
「じゃあ俺たちは時間稼ぎだな」
世界に結び付いている訳ではないけど、この世界にもっとも根深いのは世界樹だ。世界樹が大いなる意思の根源となる部分を探ってくれている間に、大いなる意思を抑えなければならない。
「シアン、イーリス、魔力を貸してくれ」
『なにをする気?』
「ちょっと大規模に『簒奪』を使ってみようかな、と思って」
相手の魔法を奪う際に糸のようなものを引っ張る力は、単純な腕力ではなく魔力だ。一度に複数の糸を奪おうとすればそれ相応の魔力が必要になる。その為には2人の協力が必要だった。
『わかりました!』
『納得はやっ!?』
「頼む」
イーリスは即座に納得してくれたが、シアンは少し不安そうだ。やはり『簒奪』は2人からしても異質なはず。だが、ここは妥協してくれないと困る。
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