第262話 大いなる意思1
大いなる意思が手を前に出すと、周囲に浮いていた物体が全て指向性を持ってこちらへと向かって飛んできた。
「がぁッ!」
飛んで来る岩の数は視認しただけで数えきれる量じゃなかったが、ヒュドラが九つの口から熱線を吐き出して片っ端から破壊し始めた。その一本が大いなる意思へと向かったが、空間を『歪曲』させて後ろに逸らしている。同時に、周囲に『光の剣』と『氷槍』を展開して放ってきた。
『固有魔法は大いなる意思の力です。つまり、大いなる意思はあらゆる固有魔法を扱うことができることも意味しています』
「どっかで見たことあるような魔法ばかり使ってるもんな」
飛んで来る魔法をなんとか避けながら、大いなる意思とヒュドラの戦いを眺めていると、背後にあった瓦礫がこちらに向かって突っ込んできた。
「ちっ!」
「任せろ」
飛んできた瓦礫を『斥力』で弾き飛ばしていたら、ウロボロスが周囲の瓦礫を全て消し去った。
「何が起きた?」
「私の力は無限。無限とは虚無と同義」
いや、そうとは限らないだろと思わなくもないが、結果的にそうなっているからまぁ、いいか。
大いなる意思はヒュドラに対抗するようにビームを放っていたが、あれも固有魔法なんだろうな。当たり前だが、俺だって知らない固有魔法の方が多い。『未来視』で大いなる意思の動きを予測しながら接近して、レヴィアタンを突き出したが、片手で受け止められた。俺の『未来視』では全く起きていなかった大いなる意思の動きに、頭が一瞬だけ真っ白になった。
「同じ『未来視』を持つ者と戦えば、そうもなるだろう?」
「ちっ!?」
大いなる意思はあらゆる固有魔法を使うのだから、俺が使っている『未来視』だって持っていて当然だった。未来を知っている者同士で戦ったところで、不毛なだけか。
距離を取ろうと背後に飛んだが、それ以上の力で大いなる意思の方へと引き寄せられる。咄嗟に『斥力』を発生させて引力と拮抗させると、横からクリムゾンドラゴンが突っ込んできた。
「龍種擬きか、失せろ」
クリムゾンドラゴンが口を開きながらこちらに向かって来ていたが、更にその横からやってきたウロボロスによって首を噛みちぎられて絶命した。
「ヒュドラ!」
「ぬぅッ!」
大いなる意思はヒュドラと拮抗するだけのビームを放ちながら、こちらに向かって引力を発生させ、更にウロボロスに向かって炎や雷を放って攻撃している。
「これなら、どうだっ!」
固有魔法をガンガン使って来るなら、アイムールで魔力を引き裂いてしまえばいい。発生させている『斥力』を止めて、引力を引き裂きながら大いなる意思へと一気に近づいてアイムールで胸を刺し貫く。
「この感触は『分身』か!?」
「その通りだ」
アイムールで攻撃したからこそわかったが、胸を刺し貫いた大いなる意思は分身でしかない。それに気が付いたが、頭上から聞こえてきた大いなる意思の声に反応するには遅すぎた。
「ぐっ!?」
『大丈夫ですか?』
「ま、まぁなんとか」
不意打ちを受けて吹き飛ばされてしまったが、そこまでの痛手は受けていない。だが、上位龍種2体と協力しながら攻撃して、分身に翻弄されていたのだから笑えない。
「死ね」
「バハムート!」
「ふッ!」
大いなる意思が『雷撃の槍』を片手に一気に距離を詰めてきたが、俺の背後からバハムートの腕が現れて大いなる意思を殴り飛ばした。
「た、助かった」
「随分と楽しそうだな。私も混ぜてもらうか」
「……また、トカゲが増えたか」
ヒュドラとウロボロスも集まってきて、再び大いなる意思と睨み合う距離感に戻ったが、こちらにはバハムートが増えている。まぁ、あっちも大いなる意思が5人に増えているんだが。
「『落星』」
「……おいおい、それはもう固有魔法じゃないだろ」
真ん中にいた大いなる意思が上に向かって手を向けると、文字通り星が落ちてきた。明らかに固有魔法の次元を超えている気もするが、人間に扱えないだけで大いなる意思が持っている力なのかもしれない。
「あの馬鹿ならなんとかできる」
「確かにな! リヴァイアサン!」
「グハハハハハハッ! 遂に来たか!」
周囲に浮いていた水球からリヴァイアサンを召喚すると、一目散にリヴァイアサンは上空の隕石に向かって飛んでいった。『落星』を使った奴以外の大いなる意思が動き始めたが、それを阻止するために俺たちがいる。
「さぁ、なんとか我を守れよ!」
「偉そうに命令するな」
リヴァイアサンの尊大な言い方に対して、いの一番に文句を言ったバハムートは翼を大きく広げてとんでもない魔力を解放し始めた。
「盟友ライトよ、上位龍種の真の力を見せてやろう」
バハムートの不敵な笑みが、今は心強い。
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