第136話 リードラシュの悪魔2
ゆらゆらと影絵のような姿のまま揺れているリードラシュの悪魔は、赤い目を細めて笑っていた。あの笑みは、自分が人間如きに負けるはずがないと確信している笑みだろう。明らかに、こちらを馬鹿にしているような顔だ。
「『風の刃』!」
不可視の刃が闇の空間を切り裂いて、ニヤニヤと笑っている悪魔の方へと飛んでいくが、途中で闇が壁となって阻まれ悪魔まで届かなかった。俺とリリアナ殿下の周囲に闇を刃として伸ばしながらも、自分の身を守るために壁を用意できるということは、操れる闇の量は無制限と考えるべきだろう。
周囲に展開されている闇の刃へ『燃焼』を発動させ、なんとか周囲を覆っている闇を破壊できないかと思ったが、どうやら闇は燃やせないらしい。
「次はなにで攻撃するの? ボク、君の抵抗には少し興味があるんだ」
「黙ってろ。今すぐ殺してやる」
伸ばされた闇は燃焼できなくとも、アイムールでなら破壊することができる。周囲を覆っている闇を破壊する為に、アイムールに魔力を流しながら闇を斬り払う。同時に『加速』と『翼』を発動させて、悪魔へと突っ込む。
「うーん……それじゃあ駄目だね」
「くっ!?」
なんとか襲い掛かってくる闇を『障壁』で防ごうとしているのだが、闇は壁なんて関係なく貫通してくる。魔力的なものでなければ、悪魔の闇は防げないのかもしれない。
複数の闇が俺に向かって殺到するが、俺に当たりそうな3つの闇をリリアナ殿下が『停止』させた。
「ん?」
「はぁっ!」
4本目をアイムールで破壊しながら加速した速度のまま悪魔へと突っ込む。当然、闇を壁のように展開してアイムールを防ごうとするが、魔力を吸収する剣に対しては無意味な防御だ。しかし、悪魔はその効果を知っているはずなのに全く動揺することもなく壁を展開していた。
「はっ?」
「はは! 残念ボクの身体には当たりませんでした!」
壁を貫通してその先にいた悪魔へとアイムールを突き刺そうとしたが、悪魔の身体はアイムールの刃が刺さることもなくただ俺の身体ごと貫通していった。魔力の身体が俺の身体を貫通しているならわかるが、魔力を吸収して攻撃できるはずのアイムールまでも貫通しているということは、そもそも魔力の身体ではないということだろう。ただ、そうなるとさっきまでそこにいたはずの悪魔の身体は何処に行ったのかという話になるし、そもそも本体ではない魔力の身体でもないのに喋っていることも理解できない。
もし、悪魔の持つ『疑心の闇』が、俺の精神に作用させて幻覚や幻聴のような効果があるのなら理解できるが、常に『千里眼』による疑似的な精霊眼を使っている俺の目には何も映っていない。もしかしたら、この『千里眼』で見ているものすらも幻覚かもしれないが。
「ボクはこっちだよ」
「……そっちも偽物か」
「魔力で見分けているのかな? うーん……精霊眼を騙す方法はないからねぇ」
どうやら、本当に偽物だったらしく自分を本物だと喚いていた悪魔は身体が闇に溶けていき、その後ろから悪魔が再び出てきた。闇を支配する魔法なだけあって、この世界の中では本当に悪魔のやりたい放題なんだろう。まずは、この世界をなんとかしなければ。
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