第132話 反撃です
スカイドラゴンが低空まで降りてきたことで、キーニーとスイッチさんが戦闘態勢に入り、アガルマ先輩とスケールさんがそのサポートに回る形になっていた。
「武器無しじゃキツイよ!」
「じゃああんたのレイピア貸しなさいよ」
「……壊さずに返してよ?」
「ぶん殴るわよ」
オーウェルとの戦いで大鎌を破壊されているキーニーと、片手直剣を破壊されたスイッチさんに向かって、スケールさんが武器無しは流石にと言うが、キーニーの返答にスケールさんは迷いながらレイピアを渡した。確かに、キーニーの性格だと貸したものだろうと平然と壊しそうではある。
「私は無手での戦闘になれているから平気だよ」
「まぁ、貴方は大丈夫か」
「頭に来るわね。アタシだって行けるわよ」
スカイドラゴンなんて心底面倒くさそうなモンスターを前にしても、上位等級冒険者の3人はやはり落ち着ていた。アガルマ先輩も、リュドマクエル男爵家の当主として、動揺した様子を見せていない。あの人たちなら、さっきのような精神攻撃以外なら大丈夫だろう。
「……スカイドラゴンの固有魔法は、結構模倣できそうだな」
「え?」
俺が思わず呟いた言葉に、横にいたリリアナ殿下がすぐに反応した。
以前、俺がフリム教授に見せて貰った固有魔法である『凍結』に加えて、普段から使用している『雷撃の槍』を組み合わせればなんとか形だけは完成する。あとはそこに、スカイドラゴンの癖とでもいえばいい構築式の特徴を模倣すればいい。一から『破壊の炎』や『大地操作』を模倣するよりは容易い。
「少し、挑戦してみてもいいですか?」
「大丈夫ですよ。貴方のやりたいことを、成してください」
こういう時、リリアナ殿下が俺に向けてくれている好意に甘えてしまうのは恥な気もするが、今は気にせずに『氷槍』を模倣する方へ頭を切り替えよう。
低空まで降りてきたスカイドラゴンは、自分へと向かってくるキーニーとスイッチさんを視認して、2人に向かって『氷槍』を発射する。『千里眼』による疑似的な精霊眼で、スカイドラゴンの固有魔法を観察して『凍結』と『雷撃の槍』を組み合わせた、疑似『氷槍』との誤差を修正していく。
一撃でもまともに受ければ、簡単に死んでしまいそうな大きさの氷槍が迫っている中、キーニーとスイッチさんは身体強化をアガルマ先輩に更に強化してもらって、驚異的な速度で避けながら跳躍する。
スイッチさんはリードラシュ王国に潜入してから『生命吸収』で吸収してきた生命力を開放して、キーニーはスケールさんから借りたレイピアに『浸食』を纏わせて接近する。
「落ちろクソトカゲっ!」
「はぁっ!」
地上で自分の攻撃から逃げるだけの存在だと思い込んでいた2人が、唐突にとんでもない速度で接近してくる。それだけで、スカイドラゴンからしたら驚愕に満ちた現象に感じるだろう。反撃の為に『氷槍』を展開しながら急いで上空へと逃げようとしているのを見て、俺は模倣を中止して『交換』を発動させ、スカイドラゴンの頭上に展開されていた氷槍2つと、キーニーとスイッチさんの位置を交換する。
「っ! はぁ!」
スイッチさんよりも先に俺の魔法であることを察知して対応したキーニーは、重力に引かれるままスカイドラゴンの首元へとレイピアを突き立てた。
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