第124話 リードラシュ国王オーウェル1
国王オーウェル・ヴァン・ソレイユ・リーダリラは、俺に目を向けた状態から手にしている宝剣アイムールの方へと視線を移して溜息を吐いた。
「その手に持っている剣……宝剣アイムールだな? レント・リースターは、再び私の期待を裏切ったようだな」
「……貴方が指示した結果ですか」
「そうだ。殺されたくなければ、自分で決着を付けろと言ったのだがな……お前の父親は、やはり無能だったようだな」
ムカつく言い分だが、国王オーウェルとしては当然のことなのだろう。辺境伯と共に王国を守護するはずのリースター子爵家が、帝国の人間になるような者を輩出した訳だ。だが、はっきり言って気分のいいものではない。
「っ!?」
「無駄だ」
俺が固有魔法を放とうと準備を始めた瞬間に、オーウェルの右側にいたキーニーが大鎌を片手に突進するが、いつの間にかオーウェルを通り過ぎた状態で鎌を振り下ろしていた。それを見てから、俺は『雷撃の槍』を手から放ったが、オーウェルは動くことなく放たれた槍は国王の前で不自然に曲がって玉座に直撃した。
「固有魔法か……なんだ?」
「恐らく、空間を捻じ曲げていると思います」
「空間を?」
俺の疑問の言葉に対して、精霊眼でその正体を見極めようとしていたリリアナ殿下が答えを示した。
直接攻撃も魔法攻撃も捻じ曲げて自分に当たらないようにしているのだとしら、実に厄介な固有魔法だろう。リリアナ殿下の持つ精霊眼は、俺の持っている『千里眼』による疑似的な精霊眼とは精度が全く違う。恐らく、リリアナ殿下が言っていることは本当なのだろう。涼しい顔をしていた、オーウェルの口に笑みが浮かび上がっていた。
「私の固有魔法を見抜いた……それが帝国皇女の精霊眼か。確かに、私の固有魔法は『歪曲』であり、そこの女の攻撃も、リースター家の裏切者の攻撃も私が捻じ曲げることで外させた」
思ったよりも素直に自分の固有魔法を認めたが、それは恐らく自分の固有魔法を突破できる存在などないという自信があるからだろう。だが、今の俺にとって固有魔法の正体を明かすことは命取りになると思い知らせてやる。
「ふ……アイムールで私の『歪曲』を無効にしようと考えているな」
「……どうかな」
確かに、それも考えた。アイムールの力は魔力を吸収することによる固有魔法の無力化ならば、確かにオーウェルの『歪曲』にも対抗できるかもしれない。しかし、この自信に満ちた表情を崩すには、そんな生易しい方法では駄目だ。こいつは、根本的な部分からへし折ってやらなければならない。
「やって見せろ。お前がもし、そのアイムールをレント・リースターよりも使いこなせると言うのならば、お前を新たなリースター家当主として、私が認めてやろうではないか」
「悪いが、お断りだな。俺は帝国のライト・リースターだ」
「……アサシンキマイラとグランドドラゴンを討伐した男は、もう少し賢いかと思っていたがな」
オーウェルが勝手なことを言っているが、リースター家は今となってはエルスのものだ。それをオーウェルが勝手に与えるなど、俺の知ったことではない。俺の心にあるのは、さっさとこの戦争を終わらせたいという考えだけだ。
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