第122話 レント・リースター3

「クソっ!」


 父から放たれる『衝撃』の魔法は、以前に放たれた時はこんな風に見えていただろうか。俺が固有魔法を手に入れて、父の放つ『衝撃』を同じ『衝撃』で相殺することができるから、俺はこんなにもゆっくりと余裕を持って観察しているんだろう。


「お前、さえ……お前さえいなければっ!」

「もう、止めてくださいお父様。これ以上、続けたところで貴方の命に響くだけですよ」

「黙れっ!」


 命に響くというのは、なにも脅しで言っている訳ではない。レント・リースターの持つ固有魔法である『衝撃』はそこまで燃費のいい固有魔法ではない。そして、レント・リースターはそこまで大量の魔力量を持っている訳ではないし、恐らく手に持っているアイムールも燃費のいい武器ではなさそうだ。仮に、アイムールで吸い取った魔力を自分のものにできるとして、その能力で解体した『障壁』程度では大した量にもなっていないだろう。

 魔力が底をついた状態で『衝撃』を放ち続ければ、命が危ない。


「……これ以上続けるなら、手荒になりますよ」

「やってみろ!」

「なら、遠慮はしません」


 まずは面倒そうなアイムールを手放させる。その方法は幾つかあるが、一番簡単なのは父の動きを止めて武器を奪うこと。というか、それ以外にいい解決方法も思いつかないので、それでいく。


「ぐっ!? なんだっ!? 腕が……重いっ!?」

「その武器、没収させてもらいます」


 アイムールを振り回されれば、危険な状態まで魔力を削りかねないし、単純に魔力を吸い取られるという特性はかなり厄介だ。俺は『加重』で腕を振れなくしてから、グランドドラゴンの固有魔法である『大地操作』を使って腕程度の地面を隆起させ、父のアイムールを持っていた右手を拘束して宝剣を奪い取る。


「くそっ! 返せっ! それはリースター家の宝剣だぞ! 廃嫡されたお前が触れていいものではない!」

「そんなものを振り回している方が悪いんですよ。しかも、実力で簡単に奪い取られている」


 父は、俺が複数の固有魔法を使っている事実に頭が追い付いていない。だから、俺がどうやって自分を攻撃しているのかも全く理解できていないのだ。

 振り回していたアイムールを奪ったならば、次は父を動けなくすればいい。それもまた、俺が使った『大地操作』で簡単にできるだろう。


「ここからでも『衝撃』を放てばお前に攻撃できる!」

「どうでしょうかね」

「なっ!?」


 俺に向かって再び固有魔法を放とうとしたが、即座に足元の地面を操作して父の足が嵌まるようにする。下に落ちて地面に手をついた瞬間に、今度はその手を地面に埋め込ませるようにして四肢を拘束する。


「まだっ!?」

「まだやるんですか? なら最終手段ですけど、申し訳ありません」


 手足を拘束されながらも俺に対して攻撃しようとしてくる父をこれ以上、身動きできないようにするには動けないように気を失わせるぐらいしかない。しかし、今の俺には身動きを止める手段が存在する。


「これ、は……」

「勝手にスイッチさんの魔法、借りたけど……いいか」


 俺が使った固有魔法は、スイッチさんが使っていた『生命吸収』である。俺は『千里眼』を使うことで、父から吸い取れるギリギリのラインを『生命吸収』で吸い取って動けなくした。急に襲い掛かってくる脱力感に逆らおうとしていたが、レント・リースターは四肢を地面に埋め込まれた状態のまま、静かに意識を失った。

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