第119話 王都へ直進です
結局、制圧したリースター邸宅で一晩だけ休憩した潜入メンバーは、俺の先導の元王都に向かって進んでいた。
モンスターを引き連れた王国軍と戦っていた時と同じように、俺が『千里眼』で周囲の状況を把握しながら『翼』で先導し、その背後を全員が走って付いてくる形。キーニー、スケールさん、スイッチさんは上位等級冒険者なだけあって手慣れているが、アガルマ先輩は大丈夫だろうかと思っていた。しかし、何の問題もなさそうにアガルマ先輩は俺たちについて来ていた。
「ふふ、特等席です」
「……静かにしててください」
因みに、リリアナ殿下は俺の腕の中である。
絶対、リリアナ殿下も付いてこられるだけの実力はあると思うのだが、一番安心できる場所だからとリリアナ殿下が譲らなかったのだ。と言っても、道中に出てくるモンスターはスイッチさんが『生命吸収』で全て殺しているのだが。
「王都まではあと……数分ぐらいかな」
「結構、速いんですね」
「後ろの人たちが早いので」
王都に向かうメンバーの中で最も速いのは、空を飛んでいて『加速』なんて魔法の使える俺だが、下を走っているメンバーもとんでもない速度なので手加減せずに俺は飛んでいる。実は、まだ練習が足りなくてアリスティナほど翼を使いこなせていないとはいえ、普通の冒険者ならばあっという間に置き去ってしまう速度なんだけど……やはり化け物ばかりだ。
「……でも、うっすらと王城が見えますね。あのキラキラと無駄に眩しいものが、ロンディーナ城」
王都ロンディーナに聳え立つ、リードラシュ王国の王城ロンディーナは、成金趣味によって装飾された黄金色をしていた。10年以上前はあんな外観ではなかったのだが、国王オーウェルが狂っていく中で少しずつ見た目が変っていったと言われているため、あの王城は国王の正気を示すものだと噂されていた。その噂が本当ならば、今の国王オーウェルは到底正気とは言えない存在の様だ。
リースター領から片道2時間もしないうちに、王都の中心部分までやってきた。人気が少なく、中心部から王城にかけて派手な貴金属や宝石などが散りばめられた悪趣味なロンディーナを見て、リリアナ殿下は顔を顰めた。
「国を治めるはずの王族が、自らの私欲でここまで肥大化するなど、許されるはずがありません」
皇帝の実子であり、しっかりと皇位継承権を持っているリリアナ殿下は、ただこの悪趣味な成金都市を作り出した国王に対して怒っていた。
言葉はないが、リリアナ殿下の言葉に同意するかのようにその場の全員が頷いた。この王都も見ても、国王がまともな人間だとは思えないだろう。
王都の国民の姿を全く見ないという違和感を抱えながらも、俺たち6人はゆっくりと王城へと向かって一歩を踏み出した瞬間、背後から誰かが飛び出してきた。
「ライトぉっ!」
「……お久しぶりです。お父様」
俺は『千里眼』で常に視野を広くしていたので、見えていた敵が飛び出してきたことに驚きはしない。冷静に『障壁』を展開して向けられた剣を防ぐ。
リースター家に伝わると言われる宝剣を片手に鬼のような形相をした男、レント・リースターが俺に向かって襲い掛かってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます