第107話 奪還作戦開始です
「諸君、私たちは数多くの仲間を失いはしたが、帝国侵略軍の主力を悉くを叩くことに成功した。捕虜の王国兵から聞き出した情報によると、グランドドラゴンを超えるモンスターはいないようだ」
いたら困るが、1%の可能性を潰しておくのは大事だ。バーンズ侯爵もそこら辺は抜かりないだろう。
「これより、私たちはカーナリアス要塞を奪還する。あの要塞を取り戻せれば、この戦争に負けはなくなる」
そもそもカーナリアス要塞を半壊させられたことが発端の戦争。要塞を取り戻してしまえば、戦争が始まる前の状況に戻すことができる。失った命は戻らないが、失った領土は戻ってくる。この奪還作戦に反対する者はいないだろう。
「カーナリアス要塞はクリムゾンドラゴンの攻撃により半壊させられ、更にアストリウス辺境伯が撤退するときに破壊工作をしている。今だけはあの要塞も無敵の不落要塞ではない。アストリウス辺境伯が直接軍を率いて正面から戦っている間に、私が率いる上位冒険者と騎士団で要塞内部へと侵入して制圧する」
辺境伯たちを囮にして侯爵が率いる少数精鋭の軍勢で内部から制圧。俺が知らないだけで、多分カーナリアス要塞には横から入る隠し道でもあるのだろう。現実的に可能そうな作戦だ。
「……質問はないな? では、明日の早朝に作戦を開始する。解散!」
会議は思ったより簡単に終わってしまった。俺は上位冒険者になるので、恐らくバーンズ侯爵と共に内部に侵入することになるのだろう。正直、固有魔法を自由に発動したいので外が良いんだが、文句も言っていられない。
「お、ライト君丁度良かった」
「辺境伯?」
さっさと寝ようと思っていたが、突然アストリウス辺境伯に声を掛けられてしまった。
「明日の作戦なんだがな。多くの固有魔法を扱って対処できる範囲が広いライト君には、カーナリアス要塞の王国側へと回ってもらいたいのだ」
「えーっと……つまり?」
「クスヌバルクの嫡子と共に、王国側からやってくる援軍やモンスターを蹴散らしてほしいのだ」
おっと?
なんか知らない間に俺が作戦の要なんだみたいな論調になっているが、正直そんなの誰でもできそうだぞと思った。しかし、アサシンキマイラのような面倒なのがやってきた時に簡単に対処できそうなのが俺と言うのは、なんとなく理解できる。これは、バーンズ侯爵とアストリウス辺境伯に実力を認められたと喜んだ方がいいところなんだろうか。
「わかりました。ザリード先輩は俺が運べばいいんですよね?」
「そうしてくれると助かる」
まぁ、別に断るつもりなんて最初からないけど。
誰かの指示に従って内部に侵入するくらいならば、ザリード先輩と自由に暴れていた方が気が楽だ。前世の影響なのか、縛られるのはあんまり好きではない。
翌日、俺はアストリウス辺境伯の軍勢と共にカーナリアス要塞の目の前まで来ていた。
「行くぞ!」
要塞の入り口に最低限作られていたバリケードを『圧縮』で粉々に破壊したアストリウス辺境伯が、気勢を上げて軍を動かし始めた。王国軍もカーナリアス要塞を奪還される訳にはいかないと、要塞内部から続々とモンスターを連れて飛び出してくる。
「よし、俺たちは反対側だ。頼むぞ」
「了解です」
このまま要塞内部を突っ切って反対側に行く訳にもいかないので、シアンにザリード先輩と俺に対して『認識阻害』を使ってもらって、俺がザリード先輩を『翼』で空から運ぶことになる。
こうやっていると、なんだか書簡を届けさせられる伝書鳩の気分だ。
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