第105話 グランドドラゴン5
「こいつ、アタシの『浸食』を警戒し過ぎなのよ!」
「警戒してるのは『浸食』じゃなくて、近づいてくる人間全員だと思うよ!」
下ではグランドドラゴンの攻撃をなんとか避けながら、というかスケールさんが捌きながらキーニーが突撃していた。悪態を吐きながらも、すごく息の合ったコンビネーションだと思う。
その背後でスイッチさんはなにか緑色の光を弾にして放っていた。グランドドラゴンから生命力を吸収していた時と同じ色だから、多分生命力を撃ってるとかだと思う。あの人の魔法はまだよくわからない。
俺が用意している魔法は、グランドドラゴンには気が付かれていない。だが、次に規模の大きい魔法を発動させた時が攻撃チャンスだ。
「グルォォォォォォォ!」
「っ!?」
「これは!?」
攻撃が当たらず、執拗に近づいてくるキーニーとスケールさんを嫌ったのか、グランドドラゴンは攻城兵器よりも遥かにデカい大地の槍を10本作り出した。ただの土塊である槍にはキーニーの浸食は効かない。スケールさんもスイッチさんも、これをなんとかできる魔法は持っていない。それでも、キーニーは全く怯まずに前に出た。
「ぼさっとしてんじゃないわよスケール! この程度ならアイツがなんとかするわよ!」
「……そうだね!」
「……本当に、いいチームになったみたいだ」
キーニーとスケールさんから向けられる信頼が、とても嬉しい。自分が誰かに必要とされているのが嬉しいとかではなく、本当に信頼してくれているのだと温かい気持ちになる。なら、俺はその信頼に応えなければならない!
『くぅ!? 魔力が限界!』
「ありがとうシアン。グランドドラゴン、同じだけの魔力を込めた魔法ならどっちが勝つと思う?」
「ギュオァ!?」
10本の大地の槍を防ぐために俺が発動した魔法は『大地操作』だ。つまり、グランドドラゴンと同じ魔法で同じ大きさの大地の槍を10本作り出した。
キーニーとスケールさんを襲おうとしていた大地の槍に、同じ大地の槍をぶつけて破壊していく。互いに破壊されていき、最後の10本目が破壊されると同時に、キーニーがグランドドラゴンの首を大鎌で斬り裂いた。
グランドドラゴンの体躯を考えれば大した傷ではないかもしれないが、キーニーの『浸食』はそんなことお構いなしだ。
「ギュアアァァァァァァァ!?」
「はっ! ジタバタと可愛くない悲鳴ね! ざまぁみなさい!」
「口が悪いよキーニー……けど、これでも終わりだね」
キーニーの『浸食』は止まる気配がない。あっという間に首の鱗をボロボロにしたら、増殖するウィルスのように身体全体へと広がっていく。しかし、俺は最期にグランドドラゴンが魔法を発動しようとしていることに気が付いていた。
「今更、無駄な抵抗だ!」
再び構築式を展開して『大地操作』を発動させ、先ほどと同じ大きさの大地の槍を作り出し、それに『加速』と『強化』を付与してキーニーに向かって放たれそうになっていた土の剣を破壊して、そのままグランドドラゴンの頭を貫く。
「……龍種の魔法が使えるって、よく考えなくてもずるよね」
「僕もそう思うよ」
「いいじゃないか。帝国の為になるならなんでも、ね」
狡いとか言わないで。
正直、俺も気にしてるんだから。
自らの魔法である『大地操作』によって貫かれたグランドドラゴンは、小さな悲鳴を上げることもできずに絶命した。
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