第103話 グランドドラゴン3
「こ、これは……」
グランドドラゴンが雄叫びを上げた瞬間に、グランドドラゴンを中心とした地面が真っ二つに割れて『破壊の炎』を飲み込んだ。
あまりにも規模のデカい魔法に、一瞬頭の中が真っ白になった。その隙に、グランドドラゴンは地面へと潜り込んでいった。
「待て!」
『ダメ! グランドドラゴンは逃げてないわ!』
シアンの警告も頭に入ってこず、地面に潜り込んでグランドドラゴンを『千里眼』で追いかけようとしたが、次の瞬間には周囲の地面が盛り上がって複数匹のグランドドラゴンを形成させた。
「土人形、か?」
土人形と呼ぶには余りにも精巧なグランドドラゴンは、同時に俺を押し潰そうと襲い掛かってきたが、この程度の攻撃を受けるほど俺も馬鹿じゃない。『翼』を展開して空へと逃れれば、それを狙うようにグランドドラゴンの尻尾が目の前に現れる。しかし、それも完璧に予知できているので避けられる。
「今の尻尾は土人形じゃないな!?」
「なにしてんのよ!」
「キーニー?」
空中でグランドドラゴンの攻撃を避けていたところに、吹き飛ばされていったはずのキーニーが茶髪を揺らしながらこちらを指差しながら怒鳴っていた。キーニーが怒鳴っていた方へと視線を向けると、いつの間にかグランドドラゴンの顔が迫っていた。
「ライト!」
「だ、大丈夫」
『未来視』を使いながら不意打ちを受けてしまうと言う失態を侵してしまったが、それ以外のことに関しては問題ない。地面に叩きつけられる瞬間に『風の刃』を展開することで勢いは減衰できていた。
キーニーが来たのならば俺が一人で突っ込む必要もない。フリム教授の固有魔である『交換』などを駆使すればキーニーをサポートしながら戦うことができる。
「キーニー、前衛頼む」
「元からアタシは前衛しかできないわよっ!」
「そうだったな」
キーニーの開き直り方に苦笑いを浮かべてしまった。だが、前衛に特化した冒険者がいるというのは楽で助かる。
身体能力強化の魔法によって高速で移動するキーニーに対して、地中から幾つものグランドドラゴンの尻尾が現れる。殆どが魔法によって作り出された偽物だ。
「左から3番目!」
「こいつねっ!」
俺が『千里眼』を使って魔力の流れを確認すれば、どれが本物かの見分けは簡単につく。キーニーに襲い掛かろうとする偽物の尻尾は俺が『障壁』を使って防ぎ、キーニーが剥き出しの尻尾へと『浸食』を叩きつける。
「ギュオァァァァ!?」
「出てきた!」
尻尾を『浸食』によって無惨な姿にされたグランドドラゴンが、地中から顔を出した。キーニーと俺を挟んで尻尾の反対側の地面から現れていた。これだけの距離で尻尾を出していたというのことは、やはりグランドドラゴンはかなり巨大な体躯を持っている。
「やぁ……よくも私の腕を切断してくれたね」
俺が振り向いてからグランドドラゴンへと向かって『破壊の炎』を放とうと準備を始めた時、グランドドラゴンの頭へと片腕のスイッチさんが右手に片手直剣を持ちながら突撃した。
直剣が頭に刺さると同時に、グランドドラゴンは痛みから逃れようと暴れまわっていたが、スイッチさんは全く振り落とされることなくグランドドラゴンの頭に貼り付いていた。
「龍種の生命力をそのまま吸い取れる機会なんて久しぶりだ。たっぷり貰うよ!」
グランドドラゴンの頭部に直剣を刺し込んだまま、スイッチさんの身体が妖しく光り始めた。
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