第100話 二種類目の龍種です

「連戦だけど大丈夫なんでしょうね?」

「問題ないです……魔力量には自信があるので」


 王国軍のモンスター軍勢を殲滅したところで受けた報告によって、帝国軍がグランドドラゴンによって壊滅したことを知った俺たちは、急いでグランドドラゴン討伐の為に動いていた。

 アリスティナの『翼』を展開して空を飛んでいる俺に、キーニーが魔力量の心配した声をかけてきた。確かに、アサシンキマイラとの戦いまでに10近くの固有魔法を俺は発動している。燃費の悪い『破壊の炎』も使っているし、魔力量を心配されるのは当然なのだが、俺には頼りになるパートナーができたので問題ない。


「帝国魔法祭は見ていたけど、実際にフリューゲル令嬢の固有魔法を使っている所を自分の目で見ると、本当に不思議なものだね」

「そうですか?」


 上空を少し先に飛んでいる俺に追従するように街道を逸れた道を走るスケールさんとキーニーの前に、スイッチさんがいる。俺がアリスティナの固有魔法を模倣している姿に好奇心が混じった目を向けていた。


 上位等級冒険者たちを統括して指揮しているはずのスイッチ・モーリスがここにいる理由は、単純に緊急事態で速度が求められたからだ。他の5等級なんかの上位等級冒険者たちは、全員が街道を戻って正規の道で向かっているが、俺たち4人は最短距離でグランドドラゴンが出現した場所へ森を突き進んでいた。

 俺が『千里眼』でリアルタイムにグランドドラゴンの位置を把握しながら、先導して三人が追従する形でグランドドラゴンの元へと向かっているのだ。


「グランドドラゴン、どんな龍種なんですか?」

「土を操る魔法が強力な龍種だよ。魔法を使って土を操りながら地中を高速で移動するそうだ。私は文献で見たことがある程度だけれどね」


 スイッチさんの話を聞いて、なんとなくミミズを思い浮かべたが恐らく足ぐらいはついているだろう。ついていなかったらそれはもはやワームだ。


「龍種なんてのはどんな種類でも、一体で軍隊を壊滅させるだけの力を持っている。君はクリムゾンドラゴンを討伐したそうだけど、それでも気を付けた方がいい」

「わかってる、つもりです」


 龍種の力は途方もないものだ。クリムゾンドラゴンは龍種の中でもそこまで秀でているものではなかったが、それでも魔法の一発で不落だったカーナリアス要塞を半壊させたのだ。

 グランドドラゴンがどんな存在で、どれだけの危険度をしているのかなど俺の想定以上は当たり前だと考えて行動した方がいい。それでも、これだけの実力者が味方にいるのならばなんとかなってしまいそうだ。


「見えてきたわよ!」

「……死屍累々ですね」


 森を抜けた街道は、元の形が判断できないほど大地が歪められていた。恐らく、これがスイッチさんの言っていた、グランドドラゴンの土を操る固有魔法の力。土が槍のようになって何人もの軍人の身体を貫いている。スイッチさんの言った通り、グランドドラゴンは生半可な力では倒せそうにない。


「グランドドラゴンの位置は特定できるかい?」

「……いえ、そこら中が魔力で満ちていて見えません」


 俺の『千里眼』は魔力を視認し、残滓によってなにが起きているのかまで大体理解できるが、この場所は大規模な固有魔法が使われた影響で、グランドドラゴン本体が放っている魔力が見えない。

 こういう時はとくにかく『未来視』によって、これから起こることを予知し続けるしかない。


「なにっ!?」


 周囲を『千里眼』で見張りながら『未来視』によって予知した未来には、俺たち四人の足下から土の刃が無数に出現する光景が映っていた。

 今からの回避は、間に合わない!

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