落ちこぼれだと言われて廃嫡された嫡子、実は最強の固有魔法を持っていました～俺を廃嫡したせいで家が没落しそうなんて言われても知りませんよ～

第96話 仲良くやれそうです

「ふぅ……思ったより話にならないわね」

「いや、キーニーの実力が凄いだけだよ」

「ようやくアタシの凄さがわかったわけ？」

　生意気な口を叩いているように見えるが、実際に彼女の実力は途轍もない物だった。戦って負けるつもりはないが、固有魔法を使わずに6等級程度のモンスターを一蹴する強さは本物だ。こうなってくると、彼女の持つ一対一でしか使いにくいという魔法がどんなものか気になってくる。

「お疲れ。キーニーちゃんもライト君も流石の腕だったね」

「え、俺のこと見てたんですか？」

「見えてたよ。空中戦も様になってたねー……流石だよ」

　基本的にキーニーの討ち漏らしの相手しかしていなかったとはいえ、スケールさんも俺の『毒矢』が通らないような固い甲殻を持っているモンスターも、目にも止まらぬレイピアの一突きで絶命させていた。身体能力と強化魔法だけで3等級冒険者に名を連ねるだけはある。『千里眼』で観察していたが、彼の身体強化魔法はアストリウス辺境伯と同じで出力が桁違いなのだ。

「……あんたもやるじゃない。正直、もう少し弱いかと思ってたわ」

「まぁ、俺は狡いことしてるだけなんですけどね」

　固有魔法を複数使うという、この世界では絶対にありえない力を行使しての結果だ。実際に、俺が身体強化の魔法と固有魔法一つだけで戦っていたらキーニーに対して全く歯が立たない。

「なに言ってんのよ。その狡いことをするのが、あんたの力でしょうが……力に狡いもなにもないのよ」

「……思ったより優しいですね、キーニーさん」

「はっ！　今更、さんづけなんていらないわよ」

　キーニーは十分に尊敬できる人だと思って敬称をつけたけど、ない方がいいと言われてしまった。まぁ、今からつけても距離ができたように感じるだけだとは思うけど、もう少しそのキツイ性格をなんとかすればいいと思うのに。

「僕は？」

「いや、スケールさんは年上って感じなので」

「えー？」

　なんとなく、スケールさんはさんづけでないとしっくりこない。これは個人的な感性だと思うが、スケールさんはしっかりとした大人と言うイメージで、キーニーは同級生みたいなイメージなのだ。

「それにしても、チラッと見えたけどあんた……精霊と契約を交わしているのね」

「僕も思ったよ。今時、精霊と契約を交わせる人間がいるなんて驚いたよ」

　二人とも戦闘中にもこちらのことは見ていたらしく、シアンの姿が見えていたらしい。まぁ、シアンは姿を隠すことをあまり好まないので、精霊眼を持っていなくても見ることはできるのだが、二人とも戦闘に結構余裕あったんだな。

「シアン」

『はーい』

「おぉ……上位精霊だね」

「……上位精霊なんてアタシも初めて見るわ。どこで見つけてきたのよ」

　上位等級冒険者と言えども、上位精霊を見る機会はないらしい。スケールさんの言葉を信じるなら、昔は精霊と契約していた人間がそれなりにいたようだけど、今は見える人すらも少ない、ということなんだるう。

『二人はライトの同僚？』

「まぁ……戦友？」

「上位精霊だから喋れるんだね。いいなぁライト君……精霊眼なんて珍しいものは持っている人の方が少ないからね」

「俺の精霊眼はズルの一環ですけどね」

　俺とスケールさんが精霊について喋っている間も、キーニーはシアンのことをじっと見つめていた。よほど精霊に興味があるらしい。

「……はぁ」

「……そこなんだ」

「あんまり気にしなくていいと思うよ？」

　精霊に興味があって見つめていると思っていたが、シアンから視線を外して自分の胸を見つめて大きな溜息を吐いた。俺とスケールさんが言葉をかけてやると本気の殺気を叩きつけられて、同時に凄まじい速度で顔を逸らした。

　女性の胸については、やはり触れない方がいいらしい。