第92話 前線はやっぱり忙しそうです
「はぁ……あんなところでベラベラ喋ってたせいで……」
「半分くらい自業自得だと思うけどね」
6等級以下の冒険者たちが志願して集まっている横で騒いでいたら、何故か三人でひとまとめだと思われてアストリウス辺境伯領に派遣されることになった。
俺、これで二回目の派遣なんですけど。辺境伯領に派遣された理由、多分俺のせいだよな。黙っとこ。
アストリウス辺境伯領と言えば、リードラシュ王国とローズ帝国の国境付近なのだから、間違いなく戦いの最前線になる場所である。そんなところに送り込まれてしまうのは少し憂鬱な気分なのだが、まぁなんとかなるだろうと楽観視しておく。そうしておいた方が気が楽だ。
「それにしても、最前線って言ってもカーナリアス要塞ではないんですよね。やることあるんですかね」
「どうだろうね……もしかしたら、帝国の上層部は半壊したカーナリアス要塞を捨てるのかもしれないね」
「え、いいんですか?」
カーナリアス要塞は帝国にとっても重要な場所なはずだが、それを簡単に捨ててしまってもいいのだろうか。戦争のことなどよくわからない俺には、どういう考えがあるのか見当もつかないが、スケールさんが言うならそうなのかもしれない。
「クリムゾンドラゴンによって半壊してしまっただろう? 今からそれを修復するぐらいなら、最初から捨ててしまって敵も利用できないようにしてしまう、みたいな?」
「なんで疑問形なのよ。それで合ってるに決まってるわ」
キーニーも同意見らしい。確かに、直しきれない拠点に資材をつぎ込むよりはいいのかもしれない。王国がカーナリアス要塞を利用するのならば、半壊した部分から崩してしまえばいい。カーナリアス要塞の堅牢さをよく知っているのが王国ならば、弱点や抜け道を知っているのが建造した帝国のアドバンテージだ。
三人で適当に雑談しながら、カーナリアス要塞が少し遠くに見える前線基地までやってきた。
帝都グランゼルから数日かけてやってきたが、随分と兵士の数が多い。掲げられている旗の紋章を見るに、各地の貴族家からかなりの騎士や傭兵が集められているらしい。
「慌ただしいわね」
「なにか動きがあったのかもしれないね」
前線基地にやってきたはいいが、中でもみんなが早足で色々と動き回っていた。スケールさんの言う通り、前線であるカーナリアス要塞で何かあったのかもしれない。これはさっさと人に話しかけて色々と聞いておいた方がよさそうだ。
「あの、忙しそうですけどなにかあったんですか?」
「君たちは……上位等級冒険者か? 丁度良かった。今からこの前線の指揮官が緊急会議をするということで、上位等級冒険者を集めていたところだったんだ」
「わ、わかりました」
他の走り回っていた人より少し偉そうな人を選んで話しかけたが、まさか自分たちを集めている人とは思っていなかった。
情報はその会議とやらで手に入りそうだ。スケールさんもキーニーも特に反対する様子もないし、そのままついて行けば良さそうだ。
それにしても、緊急の会議とは穏やかではなさそうだ。宣戦布告からまだ数日しか経っていないというのに緊急で話し合うことができたというのは、やはり良くない知らせがあったということだろう。
戦局がどう動いているのかは全く分からないが、これは少数で自由に動ける上位等級冒険者の役割を果たす時は案外近いかもしれない。
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