落ちこぼれだと言われて廃嫡された嫡子、実は最強の固有魔法を持っていました～俺を廃嫡したせいで家が没落しそうなんて言われても知りませんよ～

第86話 思ったよりすごい魔法です

「…………凄まじいな」

「いやぁ……まだ試してなかったので知りませんでした」

　リリアナ殿下のネタバレでみんなの意識が別方向に向かいかけていたけど、俺も想定していなかった出力によって微妙な雰囲気が出来上がった。

　離れた場所に置かれている的を狙って放った『破壊の炎』は、的を粉微塵に破壊してから更に背後の壁まで破壊してしまった。これが普通の魔法による破壊ならば、修復するような固有魔法の使い手に頼めば一発なのだが、俺が放った魔法は『破壊の炎』なのだ。恐らく、この壁は魔法を使わない人の手でなければ直せない。

「いや、弁償はしますよ……冒険者になって金に余裕はできたので」

　この間のクリムゾンドラゴン討伐の恩賞は、目玉が飛び出るかと思うほどの金額だった。アストリウス辺境伯が色を付けてくれたみたいだが、恐ろしくて手がつけられていなかったのだ。

「これくらいは私が懐から出します」

「え？」

「ね？」

「……はい」

　にっこりと笑みを浮かべながら権力を行使しようとするリリアナ殿下に、なにも言えなかった。マリス先輩とアガルマ先輩も気の毒そうな視線を送ってはいるが、助け舟を出すつもりはないらしい。フリム教授は、先ほど放った『破壊の炎』の方に執心中である。逃げる術はない。

　女性に後始末を頼むと言う格好悪さを感じながらも、皇族の権力に屈してしまった。

「ううむ……やはり人間の使う固有魔法とは別物だが、普通の魔法とはまた違うもの。固有魔法であると言えばそうだが、固有魔法でないと言えばそうだな」

「結局どっちなんですか？」

「マリス君、世の中の物事はそう簡単に定義できないということだよ」

「楽しそうだなーフリム教授」

「生き生きとしているな」

　いや、本当に目が輝いてらっしゃる。俺が出掛けようとした時に、何処からともなく現れるリリアナ殿下のように目が輝いている。

「けど、これでライト君はモンスターの扱う固有魔法と思わしき魔法も模倣できることが分かりましたね……家に龍種の魔法構築式とかなかったかしら？」

「アガルマ先輩、なんとかしてください」

「だから無理だ。会長の滅茶苦茶をなんとかできる訳がないだろう」

　龍種の魔法構築式が書かれた本なんて絶対、庶民の俺が見ていいものではないと思うんですけど、そこら辺は気にしないんですね。

「このまましばらく『破壊の炎』の検証を続けたいが、大丈夫かね？」

「……後、5発くらいなら？」

「そんなに魔力を消費するのか？」

　俺の総魔力量を知っているマリス先輩が、残りの回数を聞いて驚いた様子を見せている。俺も、正直ここまで魔力を消耗する魔法があるとは思っていなかった。

「なんとかして魔力量を増やす方法でもあればいいんだけどなぁ……」

「そんな方法があったら誰もが実践しているだろう」

　そりゃあそうだ。世の中よくできてるな。

「ありますよ？　魔力量を増やす方法」

「……は？」

　リリアナ殿下、今とんでもないこと言わなかった？

　マリス先輩もアガルマ先輩も、なんならフリム教授も手を止めてリリアナ殿下のことガン見してますけど。え、それって本当に表に出していい方法なんですか？