第63話 顔合わせをします
冒険者登録を済ませてリリアナ殿下に無理矢理連れられてデートした数日後、連絡用にと渡されていた協会の水晶が淡く光っていた。
「これ……どうやって使えばいいんだ?」
自室で水晶を前にして首を傾げていたが、魔力を少し込めてみたら映像水晶のように映像が浮かび上がってきた。
『ライト・リースター様、5等級冒険者の会合を三日後に開催いたします。場所は帝都グランゼルの冒険者協会本部になります。参加は自由ですが、ライト・リースター様は初めての会合になるので、参加を推奨しております。返事は不要です』
言いたいことだけを言って水晶の光が消えた。どうやら、向こう側から言葉を録画してこちらに映像を飛ばしているだけのようだ。
「留守電みたいだな」
前世で言う所の留守電みたいなものを受け取った俺は、三日後が暇なことを確認してから参加を決意した。同じ5等級の冒険者と顔を合わせる機会などそう多くないだろうから、将来的に同じ任務を共にする可能性がある者と今のうちに顔を合わせておいて損になることはないだろう。
三日後、自らの得になると考えて冒険者協会へとやってきた俺は、受付嬢に促されるまま広めの会議室へと踏み込むと、そこには既に多くの冒険者が集まっていた。
「……これが5等級の新入りか?」
「若いね。君、学生かい?」
「はい、まぁ……そうですけど」
ごついおっさんと、糸目の若い男に聞かれた通り答えたところ、俺に対する周囲の視線が強くなった気がした。
「えー!? じゃあこいつがリリアナ様と一緒にギルドに来たって言う、新人!? こんな童貞臭そうな奴がリリアナ様の恋人!?」
「いや、恋人なんかではないんですが……」
「アストリウス辺境伯の推薦だと聞いたが、随分と頼りなさそうだな」
「は、はぁ?」
明らかにギャルですみたいな若い女と、騎士のように立派な鎧を付けた金髪イケメンに詰め寄られて、正直引いている。5等級以上の冒険者は一気に数が減るとは聞いていたが、ここまで個性あるメンバーだとは思わなった。
「君、今年の帝国魔法祭で優勝していたライト・リースター君だね」
「そ、そうです。良く知ってますね」
「それはそうだろう。私はバーンズ侯爵に連れられてあの魔法祭を見に行ったんだ」
バーンズ侯爵と言えば帝国貴族の中でも資産が非常に多いことで有名な古い家であり、帝国の商業に大きい影響を持つ家だ。そんなところの侯爵に連れてこられるような人も、5等級の冒険者にもいるのかと、少し感心してしまった。
「あの帝国魔法祭を? 今年もリリアナ殿下がいるんじゃないのか?」
「成程。だからアストリウス辺境伯が」
「ほう……なら期待できそうだな」
「あー、だからリリアナ様があんたをねー」
とんがり帽子を被った、漫画やアニメに出てくる魔術師みたいな見た目をしている男の人に助け舟を出された形になってしまった。
と言うか、いくら数が少ないとはいえ5等級冒険者もっといるだろ。もしかして、この会合人気ないのか?
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