第59話 女の戦いがすごいです

「お久しぶりです。リリアナ殿下……って言えばいいかしら?」

「昔みたいにリリアナと、怖いもの知らずの子供の様に呼んでいいのよ?」


 怖い。

 なにがとは言わないが、リリアナ殿下とアリスティナの気配が怖い。

 というか、リリアナ殿下は俺にそういう気持ちを向けてくれているのはわかるのだが、なんでアリスティナがそれに対抗しているのか理解できない。もしかして、本当にアリスティナもそうなのだろうか。


「……友達だからよ」

「え?」

「友達だから、なの!」

「は、はい!」

「あら、素直に認めたらいいではないですか。初めてのお友達ですって」

「あなたは黙ってなさい!」


 どうやら公爵令嬢と皇女殿下は昔からの知り合いらしい。親しい雰囲気という感じではないのは、俺を挟んでいるからだと思いたい。

 公爵令嬢と皇女殿下に挟まれているせいで、さっきまで遠巻きに見ていた生徒たちすら逃げ出してしまった。俺の周りには、既に生徒はいない。


「あ、あの……おはようございます」

「お、おはようミミーナ」


 一人を除いて。

 もうミミーナだけが俺の癒しだ。

 だから、挨拶を返しただけで顔を赤らめないでくれ。俺の顔はそこまでイケメンじゃないぞ。ニコポナデポなんて遠い彼方だぞ。正気に戻れミミーナ。胸を揺らすなミミーナ。絶対昨日会ったおっさん、アストリウス辺境伯の入れ知恵だろ、その胸を強調するポーズ。恥ずかしいならやらなくていいんだぞミミーナ。俺の腕を取っているリリアナ殿下とアリスティナが凄い怖い顔しているのに気が付いてくれ。


「……いい度胸ですねアストリウス辺境伯令嬢」

「わ、私だって譲れないものはあります!」

「私だってとか言ってるけど、帝国魔法祭の時のあなたはもっと戦闘狂みたいな顔してたわよ」


 それは言わないでやってくれアリスティナ。

 誰か俺を助けてくれ。


 結局、同じ固有魔法の講義を受けているアリスティナだけが俺と共に講義室まで行き、いつも通りフリム教授の講義を聞いていた。


「全く……あなたももう少し拒否しなさいよ」

「いやー……皇帝陛下にも色々言われてるし」

「なにそれ」


 同じ固有魔法研究室に所属した時から、固有魔法の講義は隣に座って受けていたが、今日のアリスティナはなんだか距離が近い気がする。


「……なによ」

「いや、いつもと髪型違うの、いつ言えばいいのかなって」

「だ、だからなによ。似合わない?」

「似合ってるよ」


 普段はサイドテールって言えばいいのか、横でまとめているのを後ろでまとめていた。女性の髪形というものにあまり詳しくないので知らないが、髪形は気分で変えるのだろうか。

 似合っていると言うと、アリスティナは一人で納得するように頷きながら、にやけていた。いや、美少女に使うには絶対に合っていない表現だが、にやけていた。

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