冒険者協会

第58話 生徒会長が怖いです

「おはようございます。ライト君」

「……なんで寮の前で待ち構えてるんですか?」


 学生寮から出てきた俺を待ち構えていたのは、帝国魔法祭で戦ったリリアナ・ローゼリア会長だった。

 戦っている最中の狂気的な笑みは表面上ないが、明らかに目が笑っていない。こちらを害そうとかそういう気持ちでこちらを見ているのではなく、病的なまでにこちらを求めている結果なことはわかるのだが、正直怖い。そして、求めているという意味がどういう意味なのかも、俺は理解している。鈍感系主人公でいたかったと思ったのは、人生で初めてである。


「さぁ、行きましょう。私たちの楽しい学園生活です」

「お、おー」


 すっごいグイグイくる。腕絡ませてくるし、定期的に身体を寄せてくるし。ミミーナと比べてしまうと見劣りする大きさだが、それが逆に身体のバランスを良くしている。やはり大きすぎてもよくないのだろう。


「……やわらかいでしょう?」

「あの、首が飛びそうなこと言うのやめてもらっていいですか?」


 周りの生徒からもの凄く見られている。 

 そもそも、帝国魔法祭に優勝した時点で注目の的なのに、皇女である生徒会長とこんな風に密着して登校すればそうもなるが。それに、戦っている際にもはや告白ではないかと思われる程の発言を繰り返していたのも、投影されて多くの人間に聞かれていたのも理由だろう。


「やっぱりリリアナ会長とライト・リースターって……」

「皇帝陛下も見に来ていたんだから多分、親公認の仲に違いないわ」

「てことは、彼は凄い権力者になるってこと?」

「……私、仲良くなっておこうかな」


 すごい不穏な噂を立てられている気がするが、聞こえないふりをしておこう。親公認とか俺には聞こえなかった。てか最後の女、すごいこと言ってなかったか?


「私の騎士様?」

「ひぇ」


 別の女子生徒を見た瞬間に笑顔だったリリアナ殿下の顔が、能面みたいな表情に変化した。光が宿ってない瞳でこっちを見つめないで。助けてアリスティナ。


「今、アリスティナのことを考えましたね」

「な、なんで」

「わかりますよ?」


 怖い怖い怖い。え、女の子ってこんな感じなの?

 前世も童貞のまま死んだ俺の、女の子への幻想が崩れ去っていく。というか、さっきまで野次馬のようにこっちを見ていた生徒たちが皆、いつの間にか目を逸らして逃げた。


「……なにやってんのよ朝から」

「あ、アリスティナ!」

「あら、アリスティナ・フリューゲルさん。ご機嫌いかが?」

「え、なんですっごい睨まれてるの?」


 登場したアリスティナに助けを求めたが、リリアナ殿下に睨まれて困惑の声をあげていた。

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