第56話 帝国魔法祭終了しました

「優勝者はライト・リースター、ミミーナ・アストリウスだ!」


 帝国魔法祭が終わった後の表彰式は色んな意味で盛り上がっていた。


 王国出身の廃嫡された元貴族が勝ったという事実。

 帝国魔法学園最強であるリリアナ・ローゼリアを真正面から下した強さ。

 他人の固有魔法を扱うことができるという前代未聞の固有魔法を持つ話題性。

 落ちこぼれだといじめられていた生徒が覚醒して最強になったというドラマ性。

 一度生徒会に誘われておきながら断り自らの研究を求める独自性。


 全てが盛り上がる要素にしか使われていなかった。


「どうやってそんな固有魔法身に着けたんだよ!?」

「いや、たまたまだって」

「何で『模倣』する魔法を一々解除したりするの?」

「重複して発動はできるけど、重複分魔力も消費するから、常時発動はしない方がいいからね」

「なんでミミーナさんと組んだの? 好み?」

「隣の席にいたから、かな?」

「アタシも隣の席だったんだけど!?」

「そ、それはごめん」


 数多くの生徒に囲まれながら、俺は揉みくちゃにされていた。何人か俺に敵意を向けている奴がいたが、恐らく前に俺をいじめていた連中なのだろう。下に見ていた奴が一気に上に行ったら気に入らないと思うのは、人間として仕方のないことだろう。絡まれたらしっかり対応してやろう。

 それにしても、一気に有名になってしまった。別に意図していなかったという訳ではないのだが、一番の目的が多くの固有魔法を見ることだったので、それに関しては当初の目標は達成できたと言えるだろう。


「おぉ、ライト・リースター君。優勝おめでとう」

「これは……アストリウス辺境伯にご挨拶していただけるとは、光栄です」

「いやいや、優勝者には毎年声を掛けるようにしているのだよ」


 リンドール・アストリウスは、俺が組んでいたミミーナ・アストリウスの父親であり、帝国最強の武官とまで呼ばれるアストリウス辺境伯の現当主だ。ミミーナと組んで優勝したから喋りかけてきたのだろう。


「君は実に『反転』の使い方が上手いな。ミミーナも持て余していたというのに」

「あはは……確かに、あの固有魔法は使いどころが難しいですからね」


 ミミーナの『反転』は対象を文字通り反転させることができる固有魔法だが、実は範囲の設定が非常に難しい。無造作に放てば自分すらも反転しかねない危険性のある固有魔法なのだ。


「将来的には、是非ミミーナの婿として欲しい所だ」

「は、はぁ?」

「お父さん!?」

「なんだミミーナ? 別に問題あるまい」

「も、問題しかないよ!?」


 当たり前である。そもそも王国と睨み合っているアストリウス辺境伯が廃嫡されて追放されたとはいえ、元王国貴族出身者を家に入れるなど正気とは思えない。


「王国貴族の話なら気にするな。我が帝国は強き者を決して拒まん」

「こ、皇帝陛下!?」


 アストリウス辺境伯のふざけた話に少し呆れていた俺は、急に話しかけてきた皇帝陛下こと、ロア5世の登場に背筋を伸ばした。

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