第54話 生徒会長リリアナ6
「私の固有魔法『停止』の限界が、その程度であるというだけですよ」
「……そうですか」
正直、微妙に納得できないが、リリアナ殿下がこの状況で嘘を吐く意味がない。なにせ、本当は俺の推測が間違っていて『停止』に限界がないんだとしたら、もっと前からやるべきなのだ。それくらい、今のリリアナ殿下は俺に対して攻めあぐねている状態だ。
「私の固有魔法を見抜き、即座にその弱点まで理解してしまう。やはり貴方は生徒会、いえ……私の後継者である次期生徒会長として推薦したいものです」
「生憎ですけど、俺は固有魔法研究室に所属してましてね。生徒会は掛け持ちしたくないんです」
俺の断りと共に、ずっと笑みを浮かべていたリリアナ殿下の顔から、笑みが消えた。代わりに『千里眼』で見なくてもわかるほどの魔力の渦が身体から湧き上がっていた。
「そう……私が先に見つけた人材なんです。それを、アリスティナが奪っていった」
「奪った? アリスティナ?」
「私、嫉妬で狂ってしまいそうなの」
ガリガリと頭を掻きむしっていたリリアナ殿下は、俺がアリスティナの名前を口にした瞬間に狂気的な笑みを浮かべた。
本能が警鐘を鳴らし、俺は『翼』を使って空に逃げた。
「あぁ……あぁ! その『翼』こそが貴方に対するアリスティナの信愛の証! 許せません……折角私が見つけた愛おしい騎士様に、穢れた白い翼が生えるなど!」
「は?」
穢れた白い翼と言われて、俺は大人気もなく本気で怒りそうになる。フリューゲルを体現するアリスティナの美しい『翼』を、穢れているなどと宣う女を許せなかった。
ローズ帝国は黒い鷲を国旗に入れている国であるため、白い翼は穢れた存在であるというのは思想的な話なのだろうが、アリスティナの翼を貶されて怒らなければ、俺はあいつの友達を名乗れない。
「ぶっ潰す」
「私の騎士様……さぁ! 踊りましょう!」
楽しそうに笑うリリアナ殿下が俺の『翼』狙いを定めることは予測できていた。『停止』が発動する前に『交換』を発動させ、リリアナ殿下の背後にあった瓦礫と入れ替わる。精霊眼で『交換』が発動したことを遅まきながら理解したリリアナ殿下が反応する前に、最大火力の技を叩き込む。
『加重』『強化』『加速』『切断』を加えた『雷撃の槍』と『火炎剣』を両手に、『翼』から『風の刃』を放つ。
「乱暴してはいけません」
「ちっ!?」
勝利の為に踏み込もうとした右足は、地面に吸い付いたようにして動かない。前のめりに倒れそうになりながら『風の刃』だけを放つ。『風の刃』に『停止』を発動させ、リリアナ殿下が一気に近づいてくる。
「俺の靴を停止させたのか!?」
「人間のような複雑な構造をした生物は停止できませんけど、靴の様な簡単な物ならいくらでも止められますよ」
足が動かない違和感の正体を確かめようとしたが、靴の方が動いていないことに気が付く。
目の前まで迫っていたリリアナ殿下は。魔力を固めて不可視の武器を作り上げていた。
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