第53話 生徒会長リリアナ5

「貴方の負けですね……とは、なりませんか」

「滅茶苦茶痛いんすけど」


 攻撃を受ける前に『強化』を使って攻撃を受けたが、ただの魔力の塊がとんでもない威力を持っていた。『自己治癒促進』を発動させながら、俺はリリアナ殿下の能力の完全なる秘密解明に頭を回す。


「いや、そんな難しい話じゃないっぽいですね」

「私の固有魔法の話ですか?」

「そうですよ」


 リリアナ・ローゼリアの固有魔法は、相手の固有魔法を無力化できるものではある。確かにそれは合っているのだ。そして、それが消失するのに似た感覚なのも合っている。

 あれだけ何回も固有魔法を扱いながらも、俺がその固有魔法を『模倣』できないのも、リリアナ殿下が固有魔法を展開する速度が速すぎるのと、目である『千里眼』をすぐに潰されるからだ。

 だが、今の攻防で全ての謎は解けた。リリアナ殿下が固有魔法を消失させるのなら何故、俺の固有魔法の本体である『模倣』を消失させないのか。その理由もなんとなくだが理解できた。


「リリアナ殿下、貴方の固有魔法は『停止』ですね」

「……ふふ、正解」


 彼女は固有魔法を消失させているのではなく、停止しているのだ。固有魔法の力を停止させることで固有魔法を『消失』させているかのように見せていた。

 優れた精霊眼によって完璧に固有魔法の発動タイミングを理解している彼女は、発動する直前に停止させることで、今まで勝ってきた。


「弱点は二つ。一つは同時に『停止』できる対象が三つまでなこと」


 彼女は幾度も俺が『模倣』した固有魔法を停止させていたが、同時に三つまでしか停止させていなかった。『千里眼』を警戒しながら常に停止させていたせいで、二つまでしか余裕がなく、『風の刃』や『雷撃の槍』を放たれる度に『停止』させていた。


「そして二つ目の弱点は、複雑な構造をしたものを停止させるには時間がかかることです」

「まぁ、よく気が付きましたね」

「ほんの偶然ですけどね」


 本当にただの偶然だ。俺が自分の放つ固有魔法の構築式を知っているからこそ理解できたわずかな弱点。それが複雑なものを実質的に停止させらないというもの。


「貴方が即座に停止させていたのは簡単な構築式をしている固有魔法だけで、警戒していたはずの『未来視』はいつまで経っても停止させなかった。『分身』も停止させるのに少し間が空き、『加速』にいたっては特性もあって間に合わなかった」

「そうです。そして、貴方の持つ『模倣』は複雑すぎて停止できない。それが私の『停止』の限界ですよ」


 それこそが固有魔法を停止する能力を持ちながら、俺を完全に無力化できなかった真実である。

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