第52話 生徒会長リリアナ4

「はっ!」

「……無駄ですよ?」


 物陰から『風の刃』を構えて飛び出すが、即座に見抜かれて『分身』を消される。分身が放った『風の刃』も同時に消されたが、俺は再び戻ってきた『雷撃の槍』を発動させる。


「遅い」


 絶好の機会を狙ったつもりだったが、出の遅い『雷撃の槍』は届く前に消え、再び『風の刃』が戻ってくる。『未来視』を発動させながら『強化』を施した『風の刃』を放ち、同時に背中に『翼』を現出させる。


「アリスティナの『翼』を使うなんて、随分と親しくなったのですね?」

「仲間ですからね」

「妬けてしまいます」


 謎の言葉と共に『翼』を消したリリアナ殿下の動きに眉を顰めてしまう。今、俺の背中に生み出された『翼』を消すことは、戦いの流れで明らかに不自然だ。『翼』が消えたことで戻った『雷撃の槍』を手に持ちながら、風を纏う。


「えい」


 可愛い掛け声と共に放たれた、圧縮されているのであろう魔力の塊に対して『障壁』を展開して、同時に『雷撃の槍』と『風の刃』を放ち、そのどちらもを『強化』して『加速』させる。


「次から次へと、よくもそんなに固有魔法を放てるものですね」

「記憶力だけは自信がありましてね」


 『雷撃の槍』と『風の刃』を消されたことを確認してから、俺は『分身』と『千里眼』を発動する。正直、幾度も固有魔法を発動しているせいで頭が痛くなってきていたが、俺自身が『模倣』に慣れてきたのか、切り替えが徐々に早くなっているように感じる。


「ですが、攻撃手段が余りにも少なすぎますね」


 確かに、リリアナ殿下の言う通り『雷撃の槍』と『風の刃』を消されている状態では、俺は『強化』と『加速』を使った近接戦しかない。『燃焼』による爆破などは、リリアナ殿下が精霊眼を持っている以上、奇襲にもならないので効果はない。ただし、それはリリアナ殿下が俺が持っていると思っている固有魔法の中での話だ。


「っ! 新しい固有魔法?」

「発動する前に気付くの、やめてもらっていいですか!」


 俺はこの帝国魔法祭の最中、空から『千里眼』によって多くの生徒の固有魔法を見ていた。その中で現状に即した固有魔法を選択して『模倣』する。同時に、背後で俺と同じ動きをしていた『分身』が消される。


「『毒矢』に『火炎剣』そして『切断』ですか」

「どうします?」


 しっかり『未来視』を発動させて動きを予知し、『毒矢』を放つ。

 『未来視』で見た未来通り、『毒矢』を消されると同時に、『強化』『加速』『切断』を付与した『火炎剣』を持ってリリアナ殿下に近寄り振るうが、手の中にあった『火炎剣』が消えた。咄嗟に『千里眼』を発動しようとしたが既に消されていて視界が広がらず、いつの間にか回り込んでいたリリアナ殿下が放った魔力の塊を受けた。

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