第49話 生徒会長リリアナ1

 『分身』を解除してミミーナに近づいた俺は、彼女に手を貸していた。


「大丈夫か、ミミーナ」

「う、うん……大丈夫、だよ」


 ミミーナの持つ固有魔法『反転』は、相手の固有魔法すらも反転させる強力無比な固有魔法だが、やはり一瞬『強化』を反転させるだけでもかなりの魔力を消費したようで、肩で息をしながら汗を拭っていた。


 アガルマが吹き飛ばされていった方向からは光の柱が上がっていたが、それとは別に、周囲から戦いの音がしていないことに気が付いていた。そして、アガルマ副会長との戦闘中、何度も光の柱が上がっていることにも気が付いていた。


「……ミミーナ、離れてろ」

「え?」

「さぁ、貴方の力を見せてください? ライト・リースター君」


 ミミーナが俺の言葉に反応する前に、既に現れていた。

 俺が戦っている最中に他の全ての生徒を蹂躙した、学園最強が。


「り、リリアナ殿下?」

「ふふ……私、本気で誘ってフラれたのは初めてなんです。手加減できるかわからないですけど、ちゃんと舞台は整えましたから」


 舞台は整えた、とは他の生徒を全て脱落したことを指すのだろう。今、帝国魔法祭で生き残っているのは俺とミミーナ、そしてリリアナ殿下とペアの男子生徒だけだ。


「ライカー、頼みます」

「お任せください!」


 リリアナ殿下の指示を受け、すぐに固有魔法を発動させたのは背後にいた男だった。いつの間にか俺の目の前にいて、剣を振るっていた。それを反射だけで避け、『風の刃』を放つが姿が掻き消える。


「『転移』か」

「そうだ。俺は『転移』の固有魔法を使う生徒会庶務ライカー・キスタ。お前の真の実力を測るものだ!」


 なんだか暑苦しそうな奴だなと思いながら、小刻みな『転移』で近寄ってくるライカーへ反撃の『風の刃』を放つが、『転移』に制限はないのか現れてもすぐに消えていくので当たらない。しかし、剣を持っていることから『転移』に直接的な攻撃力は存在しない。


「『加重』」

「ぐっ!? これは!?」

「『強化』」


 はっきり言って相手にならない。『転移』する先を読んで片足だけを『加重』して動きを鈍らせ、放った『風の刃』を『強化』してライカーを吹き飛ばした。光の柱が上がったことから、追撃は必要ないと考えてリリアナ殿下の方へと向き直る。


「流石、ですね。ライカーも決して弱い訳ではないはずなんですが」

「嘘つかないでください。最初から相手にならないことぐらい、知っていたでしょう?」

「……そうですね」


 皇女殿下リリアナ・ローゼリアではなく、学園最強の魔法師として笑顔を浮かべるリリアナ・ローゼリアは、不気味に光る精霊眼で俺を見つめていた。

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