第47話 生徒会副会長アガルマ5
「よく防ぐ!」
「『障壁』を『強化』しても防ぐので手一杯か。本当、どんな魔力込めてるんですか」
「どうだろうな。お前も『強化』を使えるようになったんだ。試してみたらどうだ?」
明らかな挑発だ。マリス先輩から俺の話を聞いているのなら、俺の保有する桁違いの魔力量も知っているはずだ。身体強化の魔法に『強化』を重ねるだけでは説明がつかない攻撃力は、もう一つ秘密が隠れていそうだ。分身の身体では受けるので精一杯だが、今頃は俺の本体がなんとか策を講じているはずだ。
「空に逃げても無駄だ!」
「全く……やり辛い!」
放った『風の刃』も弾かれ、迫る拳は『障壁』を『強化』してなんとか防ぐ。俺の役割は、あくまで時間稼ぎだ。
分身に時間稼ぎをさせている間に、俺はアガルマのペアを探す。戦闘を始めてから一度も姿を現していないが、何処にいるのかは戦闘の中で発見している。それがアガルマの相方の持つある固有魔法の発動条件なのだろう。
アガルマは、俺が飛び回っている間も絶対にある建物が見える場所でしか戦わなかった。それが、最初に彼女が破壊した中心の塔である。その中に、必ず彼女のペアが存在する。
「っ!? 見つかった!?」
「あれだけ固有魔法を乱発すれば、目で見えますよ」
「精霊眼持ち? それより、何で貴方がもう一人いるのよ!?」
「さ、観念してください、よっ!」
塔の頂上に隠れていたアガルマのペアに向かって『雷撃の槍』を放つが、彼女はアガルマを支援していた固有魔法を使って『雷撃の槍』を落とした。
「重力、いや『加重』ってところですか」
「っ!」
アガルマの『強化』だけでは説明がつかない攻撃力の正体は、インパクトの瞬間だけ相方がアガルマに『加重』を発動していた。重い物は質量が大きくなり、振り回せばそれだけの破壊力となる。そして彼女の持つ『加重』の発動条件は、対象を視認することだ。
秘密がわかれば後は怖くない。既に、彼女が視認できない魔力の糸を張り巡らせている。
「『燃焼』」
「しまった!?」
視認できないものは重くできない。最初に『雷撃の槍』を放ったのはわざと視認できる攻撃を見せただけだ。魔力の糸は、精霊眼持ちでないと見ることができない。
「ミエーナっ!?」
「やっと動揺してくれましたね」
巨大な爆発が広場中心の塔から発生したのを遠目に見て、アガルマ・リュドマクエルは自らのペアがやられたことに気が付いた。同時に、もうこれで彼女はペアの持つ固有魔法の恩恵を受けられない。
「くっ! だが、私の攻撃力が少し下がっただけだ!」
「もう終わりなんですよ。『雷撃の槍』」
わざとらしくゆっくりと手に『雷撃の槍』を発生させて振りかぶる。
さっきまで『強化』の魔法だけで対応できていた攻撃を出されて、彼女は激昂している。
「舐めるなっ!」
「舐めてるのは、アガルマ副会長の方でしたね」
だから、回避することもなく自らの固有魔法である『強化』を発動させる。背後から、ミミーナが迫っていることにも、気が付かない。
「『反転』」
「なっ!?」
「さようならアガルマ副会長」
ミミーナの固有魔法である『反転』で『強化』を『弱化』へと反転されたアガルマ副会長は、防ぐことも反応することもできない稲妻の槍をその身に受けた。
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