第46話 生徒会副会長アガルマ4
「はぁっ!」
圧倒的な速さで迫る拳を避け、建物の陰に隠れた俺は固有魔法を起動する。
固有魔法の発動と共に、俺の身体が二つに分かれていく。これがフリム教授から頂いた『分身』の固有魔法である。自分と同じ存在をもう一体作り出すことができる固有魔法だが、その性能は俺と全く同じである。
デメリットとしては、完全に分裂しているので顔を合わせて会話をしないと、どちらで何が起こったのか把握できないこと。そして、分身を出している間ガンガン魔力を消費することである。
ザリードとの戦いで、気が付かれないうちに俺は分身と入れ替わり、ザリードに俺を倒したと勘違いさせ、もう一つの固有魔法で一気に近づいて不意打ちを狙った。
「逃がさんと言った!」
「もう逃げませんよ」
「なんだっ!? 速い!?」
そのもう一つの固有魔法が『加速』である。自らの身体の動きを加速したり、思考を加速させて処理能力を上げたりと、色々なことができる便利な能力である。この『加速』をつかうことでザリードの背後に一瞬で近寄り、俺は『雷撃の槍』を叩き込むことができたのだ。
急に接近してきた相手に対しても、アガルマは全く焦っていなかった。速くなったことに多少面食らっても、すぐに立て直して蹴りを放ってくる。だが、もうアガルマの攻撃は届かない。
「っ! 硬い?」
「いやいや。『障壁』を『強化』しただけですよ」
「……成程な」
自らの固有魔法を『模倣』されたことを知ったアガルマが、多少は動揺してくれるかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。女性に使うには全く向いていない形容詞だが、本当に図太い。
「ふっ!」
「いってぇ……なんて強化率だよ」
「まだまだ甘いな!」
俺が『強化』を使用できると知っても、アガルマは戦闘スタイルを全く変えない。とんでもない魔力を込めて『強化』を使用して、殴りつける。咄嗟に『強化』した身体強化の基礎魔法を使ったが、それを上回る出力で殴られれば痛い。二撃目を受けずに避け、分身したことがバレていない確信を持って、三撃目を『障壁』で防ぐ。
「ミミーナ、タイミングよくお前の固有魔法を使ってくれ」
「は、はい!」
分身が戦っている間に、俺はミミーナのところまで行って作戦の中身を伝える。それはミミーナの固有魔法と俺の分身を使ってアガルマを倒すこと。そして本体である俺が、アガルマのペアを倒す。アガルマとの戦闘中にずっとペアの姿が見えないことを疑問に思っていたが、こうやって落ち着いた状況でようやくアガルマのペアが何処で何をしているのかを把握できたのだ。
「そろそろ終わりだ」
この作戦が上手くいけば、アガルマは一気に倒せてしまう。そういう確信があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます