第45話 生徒会副会長アガルマ3

「お前とザリードの戦いは観察していた。お前がザリードの攻撃を一度も受けていないことも、お前が同時に複数の固有魔法を『模倣』していないと説明がつかない動きをしていたのも、全てな」

「やっぱり、ですか」


 俺が魔法祭で戦っている生徒たちの固有魔法を、空から確認していたのと同じように、アガルマとそのペアも何かしらの手段でこちらを観察していたのだろう。


「お前がなんの固有魔法を模倣したのかは殆ど理解できなかった。だが、ザリードを倒した攻撃が『雷撃の槍』で、それがお前の中で放てる高威力な技なのだとしたら、私は倒せん」

「……その『強化』の固有魔法で基礎魔法を補強して戦う戦闘スタイル、確かに面倒ですね」

「お前っ!?」


 ご丁寧にアガルマがザリードとの戦いについて語ってくれたが、俺は既にアガルマ・リュドマクエルの膂力の正体に気が付いた。彼女の固有魔法は『強化』で間違いないだろう。

 身体能力強化の魔法効果を『強化』でとんでもない威力に跳ね上げることで圧倒的な膂力を発生させる。ザリードと俺の戦いを見ていたのも、視力を『強化』して遠くから見ていたのだろう。『強化』という単純な固有魔法だけでこれだけ戦えるのは、彼女の才覚あってのものなのだろう。だが、タネがわかれば対策などいくらでもできる。


「なっ!?」

「さぁ、どうします?」


 固有魔法を知られて咄嗟に繰り出したのであろう拳を『障壁』で受け止め、背中に『翼』を展開しながら『雷撃の槍』を手に持ち、白い翼から『風の刃』を放つ。

 『障壁』と『雷撃の槍』はフリム教授から頂いたもの。『翼』はアリスティナ、『風の刃』はルドラのものだ。フリム教授から貰った固有魔法の構築式は7つあり、戦闘で使い辛い『発光』を除いても6つと充分な数だ。


「くっ!? なんと出鱈目な固有魔法だ!」

「いや、全部叩き割った人には言われたくないんですけどね」


 虚を突いたはずの攻撃も『強化』の二文字だけで切り抜ける姿は、まさに一騎当千の怪物である。

『雷撃の槍』を素手で掴んで砕き、迫る『風の刃』を回し蹴りで霧散させ、展開していた『障壁』を拳の一発で破壊したのだ。ここまで来ると学園準最強も現実味を帯びてくる。マジで同じ人間だと思いたくない。

 そんな筋肉質な身体つきには見えないが、それも『強化』でなんとかしているのだろうか。疑問はつきないが、今はあの膂力だけで全てを凌駕しようとする怪物を攻略しなくては。


「これしかないな」


 頭の中で現在持っている固有魔法を並べて、アガルマ・リュドマクエルを突き崩す方法を考える。あの並大抵ではない攻撃力に対応するには総力戦に持ち込む必要があるだろう。

 相手は『強化』で殴る。こちらは固有魔法の数で絡めとる。頭脳戦は、苦手ではない。

 視界の端にちらりと映ったミミーナを見て、笑みが浮かんだ。

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