第43話 生徒会副会長アガルマ1

「はぁ……ザリード先輩とやってる間に、結構生徒減ってないか?」

「そうですね。やっぱり、生徒会のメンバーが獅子奮迅の活躍みたいですよ」


 ザリードを倒して再び空へと上がったが、最初はそこら中で聞こえていた戦闘音が控えめになってきている。数百ペアが参加しているが、この規模の市街では半分も脱落すれば会敵する回数も極端に減るだろう。そうなると、ここからは奇襲にも気を付けなければならない本当の市街戦になってくる。

 わざと目立つように空を飛んでいるのだが、誰も絡みにやってこないところを見るに、残っている生徒は見に徹しているようだ。


「仕方ない。ガンガン潰しに行くか」

「そうだね!」


 戦況が膠着するのはどうにも面白くない。誰もが待ちに入っているのなら、俺から切り崩してやろう。


「『燃焼』」


 この市街の中で最も高い建造物である中心の塔に立ち、そこから四方八方へと魔力の糸を伸ばす。精霊眼を持つ者にしか見ることができない魔力の糸を伸ばし、それを燃やすことで一気に周囲を破壊するこの技は、ザリードが必殺の手として使う魔法だ。

 数十本の魔力の糸が一斉に爆発して、塔を中心に周囲の建物を破壊していく。俺が無差別攻撃をしていることに気が付いた生徒が何人か、建物の中から飛び出して攻撃を放とうとするが、爆発を気にして攻勢には出られない。そして、同じように建物から飛び出してきた他の生徒と戦いになる。


「ん?」


 一気に乱戦が始まったのを上から見ていようと思ったのだが、物凄いスピードでこの塔に向かって突っ込んでくる人がいるような。


「やべっ!」

「きゃぁっ!?」

「……お前か、無差別爆撃の犯人は」


 この人、魔力で身体強化しただけの拳で塔の壁をぶち破ってきたぞ。新種のゴリラかよ。いや、この世界にゴリラいるかどうか知らないけど。


「生徒会執行部副会長、アガルマ・リュドマクエル」

「……なんで俺、生徒会にばかり狙われてるんですかね。いや、ザリード先輩は俺から手出したみたいなもんか?」

「そうか。お前がライト・リースター……ザリードを倒したようだな」


 アガルマ・リュドマクエルと言えば、生徒会長リリアナ・ローゼリアの側近にして、学園で二番目に強い準最強の名を持つ女子生徒である。ゴリラみたいな登場の仕方をしてきたが、もの凄い美人だ。紫色の髪を揺らしながら、静かに俺を見つめる瞳はものすっごい鋭い。マリス先輩の三倍くらいは鋭い。正直、日常生活であったら絶対に目を合わせないと確信できるぐらい鋭い目してる。絶対、何人か殺してるって、あの握力で。



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