第41話 生徒会書記ザリード4
燃え盛りながら崩壊していく建物の中、ザリードは一人で立っていた。
ザリード自身も完璧な勝利と言える状態ではなかった。まさか新入生であるライト・リースターにここまで手こずるとは、ザリードも思っていなかったのだろう。
魔力を消耗したせいで肩で息をしながら、勝者は自分だと倒れるライト・リースターへと向かって歩き始めた。
「お前の『模倣』の弱点は二つ……一つ目は固有魔法を再現するのに、ある程度の情報が必要なこと。これは他人の固有魔法を模倣できることを考えれば破格の条件だが、こと戦闘中においては相手の固有魔法を真似できない。だから俺の『燃焼』は模倣されなかった」
防御できずにまともに炎を受けたライト・リースターに向かて、ザリードは懇切丁寧に解説し始める。光の柱によって脱落させられないところを見るに、未だに意識があるらしい。
「それでもう一つの弱点は、同時に一つの魔法しか『模倣』できないことだ。お前が『翼』を使ったまま『風の刃』を使わなかったことに違和感を覚えて、観察していると上手く誤魔化していたが、二つ同時には使っていなかった。それはお前がまだ未熟だからなのか、それとも強力な力の代償としてなのかは知らないが、ともかく俺はそれに気が付いたおかげでお前の隙をついて倒しきることができた。俺の知ってる『雷撃の槍』を使っていたってのも、俺の勝因の一つだな」
ザリードは一人続ける。
「いい線行ってたぜ。あと二年もすれば俺なんか勝てなくなるって思えるほどにな」
ライト・リースターは『模倣』という最強の固有魔法を持っていたが、それに頼り切った戦いをしていなかった。だからザリードは将来的には自分よりも強くなると認めた。
だが、最強の固有魔法に思えた『模倣』にはとんでもない落とし穴があった。
そう、思わせた。
「解説ありがとうございます」
「なっ!?」
背後でザリードの感想を聞いていた俺は、無防備だった身体に『雷撃の槍』を直撃させた。建物の一部を倒壊させながら吹き飛んでいくザリードを見送りながら、俺はミミーナに目を向けた。
「どう?」
「仕留められた!」
「そっか」
ザリードが懇切丁寧に説明している間に、ミミーナはレイと呼ばれていたザリードのペアを倒していた。索敵系の敵がいると今回の作戦が崩壊しかねなかったからだ。
それにしても、普段はあんなに弱気な感じの性格をしているのに、戦場に立つと辺境伯家らしいお嬢様になるのはなんなのだろうか。上下に揺れる胸から視線を逸らしつつ、ザリードが脱落した光の柱を見送った。
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