第40話 生徒会書記ザリード3
「レイ!」
「なんだ?」
「もっと離れてろ」
「……了解」
ザリードはペアのレイと呼ぶらしい女子生徒を遠ざけた。俺もミミーナの方へと視線を向けると、既に事前に話していた距離以上に移動していた。これでザリードも俺も遠慮なくやれる。
「いきますよ」
「いつでも来い。お前の『模倣』はもう見切った」
そう簡単に見切られては困る。
丁度あった時計塔の上に立って『翼』を解除して、全身に『風の刃』を纏う。ザリード相手にはあまり効果が無いかもしれないが、攻防一体で速度に秀でている『風の刃』は牽制用だ。
時計塔の上から『風の刃』を放てば、最小限の動きで避けながら、避けられないものだけを『燃焼』させていた。やはりあれ程強力な固有魔法ともなれば、魔力消費も馬鹿にならないのだろう。それに、俺を倒しても帝国魔法祭に勝てる訳ではない。魔力の消費を抑えるのは賢い選択だろう。相手が俺でなければ。
「『雷撃の槍』」
それはフリム教授が持っていた構築式の中にあった固有魔法である。どうやら少し前の卒業生の持っていた魔法なのか、ザリードはそれを見て驚いたような顔をしていた。
「そいつは俺の先輩に当たる生徒会メンバーが持ってた固有魔法だぜ? まさか会ってきたのか?」
「それは秘密ってことで」
この『雷撃の槍』は術式の発生が遅い魔法だが、放ってから着弾するまでの時間が極端に速い魔法である。威力、速度共にまさしく雷撃の如く、といった固有魔法だ。
狙いすまして放った『雷撃の槍』に対して、ザリードは足を止めて両手を前に出す。熱量で空気が歪むほどの出力で『燃焼』を発動させ『雷撃の槍』を燃焼させた。
「……すごいな」
「驚くのはまだ早いぜ」
追撃のために『雷撃の槍』を準備していた俺は、ザリードの呟きに眉を顰めた同時に、いつ間にか俺の周囲を覆っていた魔力の糸が一斉に燃えた。
「炎の牢獄、てな。出の遅い『雷撃の槍』で追撃しようとしたお前の判断ミスだぜ!」
随分なヘマをしてしまった。
ザリードは既に『模倣』の弱点を見抜いていたのか、動きに全く無駄がない。
急いで『雷撃の槍』を消してザリードの『燃焼』を防がなければ。
「判断が一歩遅い!」
いつの間にかザリードが背後まできていた。
間違いなくザリードは今、基礎魔法の移動魔術を発動させた。そうでなければ今の速度は説明がつかない。
「結構楽しかったが、俺の勝ちだ」
自らの魔力を『燃焼』させて作り出した極大の炎を手にするザリードの言葉が、どこか遠く聞こえる。数軒分の建物を吹き飛ばす勢いの業火が放たれ、そのまま俺は迫る炎に飲み込まれた。
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