第38話 生徒会書記ザリード1
「ふーん……面白い固有魔法を使っている奴が多いな」
俺は『翼』を使って空を飛んでいた。有力な生徒の固有魔法は把握しているが、それ以外の生徒も面白い固有魔法を使っている奴が多い。俺はそれをしっかりと空から観察していた。
「ライト君、右方向で爆発。近いよ」
「行ってみるか」
帝国魔法祭が始まってすぐは緊張で周囲が見えていなかったミミーナだが、しばらくすると普段の学校生活中よりも落ち着いた風格を見せ始めた。これがアストリウス辺境伯家の血筋なのだろうか。だとしたらミミーナも立派な蛮族だな。
「空だと?」
「感知された? 今、あいつ絶対俺たちのこと見ずに把握したよな」
「うん」
爆発があった方向へと向かうと、ちょうど光の柱が上がって行くところだった。
その場に付くと同時に、背中を向けていた敵二人がこちらを補足して魔力を練り始めた。片方は索敵系の固有魔法を持つ生徒で、ペアを組んでいる生徒は知っていた。
「生徒会の書記か」
「うん。彼はザリード・クスヌバルク。クスヌバルク子爵家の嫡子だね」
顔を見ただけで誰かわかるような奴は大体、面倒な敵である。帝国魔法祭の常識だ。ただ、ザリード・クスヌバルクの方も俺かミミーナの顔に見覚えがあるらしく、露骨に警戒心が高まっていた。
「こんな序盤に会えるとはな。ライト・リースター」
「やっぱり俺ですかね」
生徒会の人間と言うだけで俺なんだろうなと思っていたが、本当は俺ではなくミミーナの方だったとなって欲しかったが、そうでもないらしい。
「お前のことはマリスさんからも、会長からも聞いている」
「て、ことは俺の固有魔法も?」
「勿論だ」
ペアの女子生徒を下がらせたザリードは、赤髪を揺らしながら俺を見て笑みを浮かべた。この人、絶対俺について強い人くらいにしか聞いてないわ。そして、この人絶対、戦闘狂だ。
「お前との戦い、楽しみに待っていたぞっ!」
「ほらな」
燃えあがる炎を手から発しながら突進してくる。咄嗟に手を振って『風の刃』を叩き込んだが、平然と弾かれた。
「どんな脳筋アタッカーですか」
「お前の『模倣』見せてみろ!」
「人の固有魔法を大声で叫ばないでくださいよっ!」
迫る炎を風で流しながらいくつか刃を向けるが、分厚い炎の鎧はそう簡単に突破できそうにない。迫るザリード先輩に対して舌打ちが出そうになったが、とりあえず飲み込んでから『交換』を発動させてザリードと自分の位置を入れ替えた。
「なっ!?」
「そこ!」
突然、目の前から消えた様な感覚を味わっているであろう相手に向かって、容赦なく『風の刃』を叩きつけた。
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