帝国魔法祭

第37話 帝国魔法祭

「すごいな……これが魔法空間か」


 開始の合図と共にそこら中から戦闘音が聞こえてくる中、俺はミミーナを背負ったまま空を飛んでいた。アリスティナの固有魔法である『翼』によって空を飛ぶ俺は、ミミーナを背負って戦うフィールドを眺める。


 空間魔法と呼ばれる基礎魔法によって構築されたフィールドは、平原の中に人のいない街を形成していた。帝国魔法祭の戦闘用フィールドは毎年違うらしいが、今回は市街戦となっている。俺は帝国魔法祭の戦いよりも、しっかりと人が住んでいれば人口が5万は入りそうな街を空間内に再現するこの空間魔法の使い手に感心していた。


「こんなずっと飛んでたらすぐに見つかっちゃうよ!?」

「大丈夫だって」


 まだ戦いは始まったばかりだが、既に街は炎上したり爆発したりとやりたい放題である。時折、光の柱が上がって生徒が空間から弾き飛ばされているが、運営サイドから戦闘不能だと判断された生徒が脱落しているのだろう。

 ルールとして武器の持ち込みも許されているが、俺とミミーナは武器をまともに使えないので一つも持ち込んでいない。そのため、現在俺とミミーナは身軽に空を飛んでいる。背中にいるミミーナはすごい焦っているが、俺はもっと数が減るまで空にいるのもありだなと、予想よりも潰し合っている生徒たちを見て思っていた。


「おっとっと」

「見つかったよ!?」


 優雅に空を飛んでいると、何処からともなく矢が飛んできた。視認してそれを避け、適当な建物の屋根に降り立って『翼』を解除する。


「もっと観察してたかったんだけどな」

「じゅ、充分じゃない?」

「まぁ、そうかも。じゃあ計画通りに頼むよミミーナ」

「が、頑張る!」


 ミミーナが俺から離れていくのと同時に、下から二人の男子生徒が上がってきた。


「げっ、こいつライト・リースターか?」

「ルドラを倒した? どうする?」

「敵の前で相談なんて悠長だ、ねっ!」


 どうやら俺のことを知っていたらしく、動きを止めて顔を見合わせる二人に、俺は容赦なく『風の刃』を放つ。屋根を削りながら迫る風を左右に割れて避けた生徒に対して、俺は再び風を放つ。


「おわっ!?」

「一端離れるぞ!」

「了解!」


 術式の速攻性を持つ『風の刃』だからこそできる攻めに対応しきれず、二人は別々に屋根から降りる。


「終わりか」


 同時に、爆発音と共に光の柱が二つ上がる。屋根の下を見れば、ミミーナが安堵の息を吐いているのが見えた。

 二人が下に降りるしかない状況を作り出してから、屋根の下に起爆式の基礎魔法罠をミミーナに仕掛けて貰っていた。速攻性で『風の刃』に対応できる固有魔法が少ないからこそできる芸当だ。

 初戦闘をなんなく切り抜けた俺は、ミミーナと合流して『翼』によって再び空へと舞い上がった。

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