第36話 帝国魔法祭が始まりました

 ミミーナとペアを組んで色々な準備を始めてから数週間が経った。

 帝国魔法学園は既に学園祭最終日まで来ていた。

 帝国魔法学園の学園祭は、基本的に固有魔法などで決闘を行う催しか、研究成果を発表する場である。学園祭というよりも一年の締めくくりとしての成果をお披露目する場というほうが正しいだろう。

 学園祭は三日間あり、一日目は学者などが多く集まる研究発表会。当然、固有魔法研究室も研究成果を発表できればよかったのだが、フリム教授が俺の『模倣』の研究を来年発表した方がいいとして、参加を見送った。

 二日目は固有魔法を使った一対一の決闘がトーナメント形式で行われる。学年、年齢、性別、立場など全く関係なしに行われる騎士の様な正々堂々とした勝負。これも大いに盛り上がるが、所詮は前座扱いをされる。優勝したところで少し知名度が上がるだけで、大した実力者は出てこないのだ。

 そして三日目となる最終日には、一日中かけて帝国魔法祭が行われる。皇帝自らが観戦に来る関係上、多くの有力貴族も集まる大イベントであり、帝国魔法学園において最も重要なイベントである。


「大丈夫?」

「だ、だだだだ、大丈夫」

「大丈夫じゃないね」


 ペアを組んでいるミミーナが緊張でガチガチになっているのは、観客席の皇帝陛下と歓談しているアストリウス辺境伯が原因なのだろう。親に晴れ姿を見せたいと思う反面、情けないところを晒してしまったらどうしようと、思っているのだ。


「肩の力を抜いて? 俺たちだって沢山準備してきたんだし。大丈夫だよ」

「は、はひぃ……なんでライト君はそんなに落ち着いてるのぉ」

「あはは。別に緊張することなんてないからね」


 俺は楽しみではあるが、あまり緊張はしていない。理由としては、そもそも参加して多くの固有魔法を見ることが目的であることと、優勝した時に確約される宮廷魔法師に興味がないことである。


「リリアナ殿下もいるんだよ? 普通に怖いよ」

「学園最強、か」


 帝国魔法祭に参加するにあたって、有力な上級生の情報は事前に調べてきている。その中でも、やはり障害となるのは真に学園最強と呼ばれるリリアナ・ローゼリアだ。彼女は皇女と言う権力だけで、この帝国魔法学園を支配している訳ではない。しかし、彼女の戦闘データは二年分存在する。固有魔法も不明であるとされているが、俺は既に見当をつけていた。


『諸君の健闘を祈る。では帝国魔法祭、開始!』


 ミミーナと会話していたことで殆ど聞いていなかったが、生徒会で唯一参加していないせいで司会をやらされていると文句を言っていたマリス先輩の合図を聞いて、俺とミミーナは上に飛んだ。

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