第35話 ストックを手に入れました
「まずは簡単な構築式で構成された固有魔法から試してみようか」
「そうですね」
過去の固有魔法を再現する実験は、固有魔法研究室の実験であると同時に、実際に目の前で見なくても、構築式だけで俺のストックを増やすことができるかどうかの実験でもある。
「この固有魔法などいいだろう」
「これは……確かに簡単な構築式ですね」
ぱっと見ただけで簡単に再現できそうなほどの構築式を見て、俺は頭の中で組み立てていく。因みに、アリスティナとミミーナも一緒に構築式を見ているが、まだ勉強中のため首を捻っていた。固有魔法研究をそれなりにしているアリスティナはともかく、ミミーナはそもそも簡単かどうかの判断もつかないだろう。
「いきます」
頭の中で構築式を組み立て、効果を把握した俺は頭の中で『模倣』を起動させる。組み立てた構築式を元に『模倣』で魔力を通していく。
完成と同時に、模倣した固有魔法が発動する。
「眩しいわ」
「うむ。眩しい」
「ま、眩しい」
俺の身体が発光していた。
「それで?」
「え? 終わりだけど」
「……光っただけ?」
「うん」
この固有魔法『発光』だしね。
自らの肉体を発光させる。
暗闇で使うと便利かもしれないけど、別にランタン使えばいいし関係ないな。
「……外れじゃないの!?」
「いや、発動したのだから実験は成功なのだが」
他人が発動したのを直で確認しなくても、構築式を理解することで『模倣』が発動する。そう知れただけで大きな成果だ。固有魔法研究室としても、フリム教授の予測通り、俺の魔力の特色が透明だからこそできた証明の一歩になった。
「てか眩しいからいい加減やめなさいよ!」
「はい」
アリスティナに怒鳴られて発光するのをやめた俺は、ミミーナと目を合わせた。
「わ、私はすごいと思うよ?」
「そうか? ありがとう」
「教授、さっさと次の固有魔法を『模倣』させましょう」
「う、うむ。アリスティナ君、圧力が凄いぞ」
よっぽど『発光』しただけなのが気に入らないのかな。多分、必死になって考えて内容を理解しようとした構築式が、ただ光るだけだったのが気に入らなかったのかな。そんなもんだと思うけどな。
ぷりぷり怒っているアリスティナを無視して、俺は次に模倣する魔法の構築式を教授から受け取った。
さっさと何個もストックを作る為に構築式を見て『模倣』しようとした俺は、その複雑さからは考えられないほどシンプルな構造を見て固まった。
「……教授、これ本当に研究室の人間が残した固有魔法ですか?」
「流石に、ライト君は気づくかね?」
俺はその構築式を見て、中身を理解してしまったのだ。同時に、これが現代の人間が残した固有魔法の構築式でもないことを。
フリム教授もやっぱり一人の研究者として、俺の固有魔法で遊んでいるのだろう。溜息を吐きながら俺は『模倣』の準備を始めた。
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