第34話 練習しました

 ミミーナとのペアを組んでから数日後、俺は帝国魔法祭に向け、魔法実技用の施設を貸し切りにしていた。自らの『模倣』で使える固有魔法を増やす為と、固有魔法研究室の実験を兼ねて人に見られる心配のない屋内施設を貸し切りにして、アリスティナ、ミミーナ、フリム教授の三人と『模倣』を繰り返していた。


「そうそういい感じ。やっぱりライトは真似するの上手いよ」

「褒められているのかどうか分かり難いが、一応ありがとう」


 現在、俺はアリスティナの固有魔法である『翼』を再現した状態のまま、室内を飛び回っていた。練習すれば飛べるようになると言われていたが、ようやく飛ぶ方法が安定してきたのだ。

 俺のことを頭上でからかっているのか本気で言っているのかわからないアリスティナのように、自由自在に飛ぶことはできないが、一先ず使い物にならないことにはなっていなかった。


「す、すごいよライト君! 本当に『模倣』できるんだね!」

「あ、あぁ」


 地上に降りてきた俺に近づいてきたミミーナは、興奮した様子で俺の背中に生えている翼に触れた。

 フリューゲルを体現するアリスティナの『翼』は、魔力消費の少ない優秀な固有魔法だと、使っていて本当に実感する。

 当然だが固有魔法は強力であればあるほど消費魔力も多くなる。ルドラの持つ『風の刃』は低燃費かつ高速で扱うことのできる優秀な固有魔法だが、アリスティナの『翼』の方が燃費はいい。マリス先輩の『縮小』やフリム教授の『交換』は、対象とするものの大きさや重さなどの条件によって消費魔力が違う。しかし、アリスティナの『翼』はどれだけの距離を飛行しようとも、翼を現出させている部分にしか魔力消費が発生しないため、低燃費で自由自在なのだ。

 こんな固有魔法同士を細かく消費魔力別で分けられるのは、俺ぐらいかもしれないが。


「わ、私の固有魔法はどう?」

「ん……使いどころが難しいと思うよ」

「そ、そうだよね……」

「でも、とびっきり強力」


 ミミーナの持つ固有魔法は、使いどころを見極めることができるのならば、一気に戦況を変えることができる切り札のようなものだった。ただし、消費魔力がとてつもなく多い。マリス先輩との測定であり得ない程の魔力を持っているとわかっている俺ですら、効果対象によっては5、6回程度しか使えないかもしれない。

 切り札としては当然優秀だが、どこでも使える訳ではないというのも難しい話である。


「『翼』が上手く扱えるようになってきたのなら、他の固有魔法も確かめてみようじゃないか」


 俺がわざわざ施設を貸し切りにしてまで固有魔法の練習をしているのは、フリム教授に協力してもらい、過去の人間が扱っていた固有魔法の構築式を再現できるか試すためでもあった。

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