第33話 大物でした
大陸を丁度真っ二つにするように東西を支配するローズ帝国とリードラシュ王国の、現在の国境は縦に連なる大きな山脈で別たれている。西をローズ帝国が、東をリードラシュ王国が治めているが、仲の悪い両国間での小競り合いはあまり起きない。
小競り合いが起きない理由が、国境の山脈において唯一の切れ目にある帝国のカーナリアス要塞だ。築かれてから既に数十年前以上経っているが、一度も突破されたことのないカーナリアス要塞は「不落の乙女」とも呼ばれる、帝国の重要地である。
そんな重要な所に半端な貴族を置けるわけもなく、任されているのがアストリウス辺境伯家である。
アストリウス辺境伯家は、カーナリアスの要塞都市を任されてから辺境伯家になっているが、それ以前から武勇で帝国に貢献してきた筋金入りの武官の家なのだ。
王国の子爵家であるリースター家の俺すらも知っているような大物貴族家が、俺の前にいる。アストリウス辺境伯家のイメージとは真反対の草食動物のような少女だが。
「あー……やっぱり敬語がいい、ですか?」
「も、問題ないよ……同じクラスメイトだから」
あら可愛い。
明らかにふわふわびくびくしながらも、こちらを気遣ってくれる様子から、かなり性格のいいお嬢様なのだと理解できる。まぁ、それよりも小動物みたいな性格とは裏腹に、大きく実っている胸に視線が向いてしまう。声を掛けるたびに肩が跳ねているせいもあり、胸がこう……上下にゆさゆさと何度も揺れている。
一説には、男の視線が揺れる女の胸部に向いてしまうのは、遥か古代に失った狩猟本能から来るものだと言うが、絶対に嘘である。こんなの狩猟本能なくても絶対視線が釘付けになる。アリスティナもマリス先輩もスタイルいいなと思っていたが、ミミーナは別格である。
内心で熱く語ってしまったが、とにかく本人にセクハラするのはやめよう。
「じゃあペアよろしくねミミーナ」
「はい! ライト君の役に立てるように頑張るね?」
「お願いします」
可愛く笑いながら胸を揺らされるとどうすればいいのかわからなくなってしまう。
ミミーナなのことはともかくとして、俺は帝国魔法祭に向けて色々と準備をしなくてはいけない。連携とかもあるが、俺は『模倣』できる固有魔法を増やさなければ。ミミーナとの会話によって、俺は自覚している以上に、この学園内でかなりの人間に興味を持たれていることを知った。
大衆の面前でルドラを負かしたのは、やはりデメリットが大きかったのかもしれないが、済んだことをいつまでも気にしていても仕方がない。帝国魔法祭に勝つために、俺は俺のできることをしなければ。
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