第32話 ペアを組みました
「あ」
「え?」
憂鬱だと思って出した溜息が横の女子生徒と被ってしまった。隣の彼女の名前も知らないが、どうやら相手は俺のことを知っているようで、何度か瞬きして驚いていた。
「どうも」
「は、はいぃ……」
なんだかすごい怖がられている気がする。大体ルドラとの決闘のせいだろうけど、ここまでくるとやっぱり決闘なんて受けなければよかったかもしれない。
絶対ふわふわしているであろう桃色の髪の毛をした少女は、俺のことをちらちらと見ていた。
「あの、帝国魔法祭に興味とかあるんですか?」
「え、な、なんでですか?」
「いや、もしかしてペアができなくて溜息吐いたのかなー、と。違ったならいいんですけど」
失礼だと思いながらも、同じタイミングで溜息を吐く理由などそう多くないだろう。別にクラスメイトでないとペアを組んではいけないという決まりはないが、アリスティナに断られている以上、俺にはこの学園に伝手がない。
「そ、そうなんです……でも、一緒に出てくれる人なんていないので……」
「あ、やっぱりそうなんですね。じゃあ俺と一緒に組みましょうよ!」
「ひぃえぇ!?」
ここで逃せば一生ペアができない気がした俺は、桃色の少女にアタックを仕掛けた。めっちゃ怖がられているが拒否されていないので大丈夫。
「あ、あの……私みたいな落ちこぼれでいいなら……」
「何を言ってるんですか。俺なんてこの間まで固有魔法も使えなかったんですから、それに比べればマシですよ」
「で、でも……貴方は後から目覚めた固有魔法を使って、ルドラ君を倒したじゃないですか」
「まぁ、そうですけど」
かなりの引っ込み思案なのか、少女は俺のことを相当恐れているらしい。と、言うよりは、ルドラたちが俺をいじめているのを見過ごしていた罪悪感、のようなものがあるのだろう。すごく申し訳なさそうな目をしていた。
いじめられていたのを見過ごしていたのは、少女だけではないのだからあまり気にしなくていいんだけどな。
「俺の名前はライト・リースター……ため口でいいかな?」
「は、はい。私はミミーナ・アストリウスです」
「へー……アストリウス?」
なんかローズ帝国とリードラシュ王国の国境に位置する貴族の家がそんな家名だったような。
「え? カーナリアス要塞のアストリウス家?」
「そ、そうです……」
これはまた随分と偉い立場の娘さんと知り合いになってしまった。
アストリウス辺境伯家と言えば、武勇で有名な帝国の大きな貴族家だ。そんなところの子供と一緒にペアを組んで、現皇帝の前で戦う。
正直、ペアを組む相手、間違えたかもしれないと後悔し始めていた。
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