第8話 生徒会長に会いました

「さぁ、君の固有魔法を見せてもらおうか」

「いや、なんで生徒会長がここにいて、平然と始めようとしてるんですか?」


 マリス先輩に連れられてやってきた魔法実技用のグラウンドには、何故か帝国魔法学園の主とも言える生徒会長がいた。

 マリス先輩の持つ白色の髪とは正反対な、黒い髪。俺の前世である日本でも見かけないような綺麗な黒髪に、誇張無しで芸術品のような顔。男の妄想を具現化したような身体つきに、すらっと伸びた美脚。間違いなく入学した時に見た在校生代表の生徒会長だった。


「初めまして、ライト・リースター君。私が帝国魔法学園生徒会執行部会長の、リリアナ・ローゼリアよ」

「は、初めましてリリアナ殿下。ライト・リースター、です」

「そんなに緊張する必要は無いわ。ただ興味本位で見に来ただけだから」


 緊張するなと言われても無理がある。

 それはリリアナ・ローゼリアという人物がとんでもない美貌を持っているからではなく、このローズ帝国の皇帝ロア5世の実子なのだ。しかも彼女は長女であり、上には一人の兄がいるだけである。

 恐れ多くて緊張しかない。むしろ、言葉を返せただけでもまともだったと言うべきか。


「マリス、貴方の後輩でしょう? 貴方からも言ってあげて?」

「……リリアナ殿下、それは無理な願いというものです」

「もう。貴方までそんなこと言うんだから」


 実はマリス先輩とリリアナ殿下の仲が良いからここにいるのかもと思ったが、堅物のマリス先輩の態度からして本当に知らなかったのだろう。明らかに動揺しているし、俺と同じように緊張するなと無茶ぶりをされている。

 リリアナ殿下が膨れっ面で少し離れた所で、マリス先輩が咳払いをしてから何処からともなく魔道器具を取り出した。


「これでお前の正確な魔力量を測定して、そこから固有魔法を見せて貰おう」

「魔力量ですか……」


 実は学園に入学した時にしか魔力量は測定したことがない。固有魔法を持たない俺にはいくら魔力があっても無駄だと、父だった男に言われていた。

 帝国魔法学園の入学には一定以上の魔力量が必要なだけなので、正確な値を測る機会はあまりないのだ。


「こっちを右腕につけて、こっちを左手首につけろ」

「……こうですか?」

「まぁ、それでもしっかり機能するとは思うが、念のため付け直せ」

「はい」


 一切の妥協を許さないといったマリス先輩の性格に苦笑しながら、俺は黒い布を両腕に巻き付けた。


「よし。では測るぞ……魔力を流せ」


 魔力を流す。簡単に言うが、固有魔法にばかり固執する現代の魔法師には難しいと聞いたことがある。俺は固有魔法が使えなかったことから、こうした固有魔法に依存しない魔法のことも幾つか学んでいたので、簡単に流すことができた。

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