第7話 目を付けられました

 風紀委員のマリス先輩にことの経緯を全て聞き出された俺は、ゆっくりと今まで学園でやられてきたことを全て話した。


「……ふむ。この帝国魔法学園は良くも悪くも実力主義で放任主義だ。それは理解しているな?」

「勿論です。別に今までやられてきたいじめを風紀委員に断罪してほしいとか、そういう話ではないです」


 正直に言えば無責任すぎる実力主義に呆れてはいるが、それがこの世界の常識なのだから仕方がない。転生して生まれてきたから簡単に割り切ることはできないが、飲み込むことはできる。

 マリス先輩にいじめられていた話をしたのは、単純に固有魔法を発動した経緯をわかりやすく説明する為だ。


「初めて? 固有魔法を使ったのが、か?」

「いじめられていた理由でも言いましたが、俺は固有魔法を使えなかったので無能だと罵られていました」

「そうか」


 できるだけ無表情になるように努めているのだろうが、驚きが隠しきれていないマリス先輩に、俺は少し同情してしまった。

 この世界に生きる人間は、どんな血筋から生まれようとも固有魔法を持っている。だからこそ固有魔法を持たない俺は馬鹿にされ、嘲笑の対象でしかなかったが、それが後から覚醒したのだ。

 イレギュラーにイレギュラーを重ねてしまえば、もう簡単にわかる話ではない。


「大体は理解した。そうなれば両者共に固有魔法を使ったとはいえ、経緯を考えれば悪いのはルドラ・オックスで間違いないだろう」

「そうですか」


 意外に思ってしまった。

 いくらルドラが悪いからと言っても、どちらも固有魔法を使ったのだからてっきり両成敗になると思っていたが、マリス先輩の言葉から察するに、俺は軽めの罰で済みそうだ。


「君の予想通り、ルドラ・オックスには重たい罰を。君には軽めの罰を与えるが、それとは別に君の固有魔法を把握しておく必要がある」

「そうなん、ですか?」

「君は固有魔法を持たなかったのだから知らないだろうが、帝国魔法学園の生徒は自らの固有魔法を偽りなく報告する義務があってね。覚醒したのならば義務を果たさねばならないだろう?」

「確かに」


 今までは全く関係なかった話にも、これからは関わっていく必要があるのか。

 固有魔法を発現させてもいいことばかりではなさそうだが、持っていないことによる悪いことが多すぎたのだ。少しぐらいは我慢しよう。


「固有魔法については聞いていないが、私は個人的に君に興味ができてしまったよ」


 椅子から立ち上がるように手招きしているマリス先輩が、怪しく微笑んでいた。


「ルドラ・オックスの固有魔法である『風の刃』は私も聞いていた。それを簡単に解体した君の魔法に、興味ができてしまってね」


 逃がさないと言わんばかりの視線に、俺は頬が引き攣るのを自覚した。

 マリス先輩の将来は、恐らく魔法に精通したマッドサイエンティストだろうな。

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