第5話 固有魔法が覚醒しました
「死にやがれ!」
ルドラの放った固有魔法『風の刃』が、何故かはっきり見えて、何故か簡単な魔法に見えた俺は、手を伸ばして彼の真似をした。
黒い風がルドラの周囲に吹き荒れ、そこから発生した空気の刃が放たれた瞬間、俺の手から同じ形で真っ白な『風の刃』が放たれた。
「は?」
ぶつかり合った『風の刃』は、周囲の全てを吹き飛ばす勢いで弾け、そこには呆然とした顔のルドラと周囲の人間たちがいた。
「い、今……あいつルドラの『風の刃』使わなかったか?」
「い、色が違ったろ。別物だよ」
「でも、ルドラの『風の刃』が防がれるなんて……ありえるのかよ」
周囲の生徒たちの言葉を聞いて、俺は手から『風の刃』を放ったことを正確に理解した。未だに呆然とした顔のまま固まっているルドラに対して、俺は手を突き出した。
「これ『風の刃』であってるのか?」
「ふ、ふざけんなっ!」
先程のルドラと同じように白い風を纏う。同時に俺は自らの身体の中に眠っていた固有魔法が覚醒したのだと理解した。固有魔法というものを正しく理解できていなかった俺は、自らの力とすることでその形を漠然と掴み取った。
俺の固有魔法は『風の刃』ではないことを。
固有魔法を真似られて完全にキレているのか、ルドラは同じように黒い風を纏って放つ。しかし、固有魔法にかまけて魔法の理論構築が甘いのか、威力にムラがありすぎる。
黒い風を白い風で打ち消した俺は、抑えきれずに笑みが零れてしまった。
「下手くそだな『風の刃』の使い方がさ」
「黙れ! それは俺の固有魔法なんだぞ!?」
「知るか。できるようになったんだから、しょうがないだろ」
自分の固有魔法をしっかりと認識したから言えることだが、本当にルドラの固有魔法を模倣してしまったのはたまたまなのだ。
たまたま、俺は『風の刃』を模倣する条件が整ってしまっていた。だから見ただけで模倣できた。
それだけの話である。
「ふざけんな! もう絶対に許さねぇ! 殺してやる!」
「……無理だよ。今のままじゃ何度やっても同じだ」
「っ!? ふざけんなっ!」
今度はルドラが纏おうとした『風の刃』を、綿密に制御した『風の刃』で外側から解体してやった。黒い風を纏うこともできなくなったルドラは、顔を真っ赤にして拳を握り締めた。
「そこまでだ! 校内で許可のないまま固有魔法を用いての戦闘行為、処罰の対象だと知っての行為か!」
「げっ!? 風紀委員だ!」
「ルドラまずいぞ!?」
「あぁ!? 知るかよ!」
学校の秩序と安全を守る役目がある風紀委員の登場に、ルドラの仲間たちは一斉に逃げ始めたが、ルドラは構わずに『風の刃』を練り上げる。
もう自分でも自分を止めることができないのだろう。ゆっくりと、俺はルドラの『風の刃』を解体した。
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