4.聖女※アリス視点
「無事、奇跡の実が手にはいりますように」
魔の森に入って、しばらくは順調だった。
だが、急にいやな予感がして軍の進行を止めてもらった。
ここから先の魔力は、すごく濃い。馬からおろしてもらい、森の先を覗こうとするが、ただただ暗くなにもわからなかった。
日暮れの時間も迫っていて、広場があり、泉もある。今日はここで夜営をおこない、明日に備えようという、私の提案は無事とおった。疲れていると、気を使われたのかもしれない。
私は、アリス。聖王国の王女にして聖女。
事の発端は、国に病が広まったことにある。
街の人々から、精強なる騎士、更には国王たる父までもが病をわずらいたおれた。
このままでは、命にかかわる。つい最近、光の大精霊に認められて聖女となった私の治癒術でも癒すことはできなかった。やはり、まだ慣れていないのか昔の方が上手だった気がする。
国の賢人が集り調べた結果、東の魔の森にあるという奇跡の実は、万病を癒すという。
だが、魔の森は魔界にある。強力な魔族や魔獣が生息する場所に行くのは危険すぎる。
賢人たちは、他の方法がないか更に調べると言ったが、もう時間がない。
有志を募って城をでて、魔の森へと一直線に突き進んだ。
私に従ってくれた騎士は、総勢五百人近くになったが、本来の所属する騎士団がバラバラであるため、指揮系統に不安が残る。
頼りになる軍の上層部も病によって欠員が多くでている。仕方がなかった。
魔の森と思われるところにきたが、馬を降りてすすんでいては時間がかかりすぎる。邪魔な木は剣や魔術で除いて、ここまできた。
「泉で身を清めます。光精霊術で結界をはるので護衛はだいじょうぶです。あなたたちも気をつけてください」
泉にむかい、結界をはる。強固な結界だ。魔族どころか人族でも入れないだろう。結界の中と外では音すら通ることはできない。
薄着になり、泉に入る。光精霊に守られた身体は、水を清める。
深く、神に祈った。
しばらく祈っていると声がする。
「ねえ、あなたは何?人族だよね?」
あわてて目を開き声の主を見ると、変わったコウモリ?がそこにはいた。
少し、話をしたが悪い魔族ではないようで安心する。
血を求められたときは驚いたが、光精霊に守られた私を傷つけることができるのか興味がわいた。傷もよほど深くなければ癒すことができる。
手を差し出すとあっさりと牙を突き立てる。チクっとしたがそれぼどの痛みはなかった。
少し飲んだ後、コウと名乗った魔族はふるえはじめ、弱っているようだった。
(私の血は、お口にあわなかったのかしら)
心配していると、破裂音がして煙の中から騎士があらわれた。
(あ、あの姿は!)
輝く黒髪に端正な顔立ち。銀に輝く鎧をきた姿は、お気に入りの童話の英雄騎士とそっくりだ。
そちらに驚いていて、泉の中から魔物がくるのに気付けなかった。
大蛇が跳びかかってくる。
光精霊が守ってくれると大蛇の様子を見ていたら、騎士様が剣をふり倒してくださった。
騎士様に見とれていたら、様子がおかしい。
また、破裂音と煙がおこりコウモリのコウ様がいた。
(コウ様は呪いにかけられているのかしら。私の血で解呪されるなんてすてきね)
コウ様とすこし話をしたら、呪いの覚えはないという。ではなんなのだろう。
さらに話すとなんと奇跡の実を採ってきてくださるという。
来たときに分かるように伝達の腕輪を渡し、使いかたを教えた。国の宝たる神器だが、みなの命にはかえられない。
たよりないコウモリが森の奥へと飛んでいく。
また、泉に入ってコウ様の無事を祈ることにする。
(そういえば……。この結界って下側は塞がっているのかしら)
自分自身にあらたな結界をはって祈る。
(神よ。すてきな騎士様との出会いに感謝します)
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