2.魔の森
「おばさーーん」
僕の名前はコウ。吸血玉コウモリという種族の立派な魔族だ。
立派な魔族なんだけど、ほとんど魔獣と変わらない。
魔族と魔獣の簡単な分け方は、言葉を話せるかどうかということだから、間違いなく僕は魔族だ。
弱く、数の少ない魔族の姿は魔獣に近いらしい。
僕の住んでいるこの森は、魔の森。魔樹族という木の魔族の領地で、動物系の魔族は少ない。
ここでは、動物系の魔族や魔獣は彼らのエサにされてしまう。
僕は、気が付いたら森にいた。小さい頃に鳥の魔獣かなにかにさらわれて連れてこられたらしい。
魔樹族のアタおばさんに助けられ、ここに住むことを許された。
おばさんが言うには、食いでがなかったから大きくなるまで育てようと思ったらしい。
様々な植物系の魔族や魔獣に囲まれて、楽しく生活している。
そう、この森に存在する木々は、ほぼすべて力ある魔族、魔獣なのである。
許しなきものが入れば、いっせいに襲いかかる。通称帰らずの森と言われるわけだ。
身体に対して小さな羽で一生懸命飛び、おばさんの元へ向かう。
「誰がおばさんだい。おねえさんだろう」
一緒に育った植物たちが、そう呼んでいたんだから仕方ないじゃないか。もう、クセになっている。
アタおばさんは、この森の中でも大きくて長生きな方だ。そして、強く、博識なのだ。
「そんなことより、あっち!森の西の方になにかが近づいてきているんだって」
植物たちがさわいでいた。伝言ゲームのように僕にも伝えられたのだが、肝心の正体の情報が抜けていた。
「ああ。人族がきているみたいだね。わざわざ、我々の肥料にでもなりたいのか」
さっすが、おばさんである。聞けばだいたいのことは教えてくれる。困ったときの、おばさんだ。
って、人族!魔族と敵対しているものたちだ。魔界の魔の森になんのようだろうか。
「けっこうな数だね。本当に森に入るつもりなのか。おろかだねぇ」
なんでここにいて、西の方のことがわかるのだろう。
人族がおおぜい来るというのに、おばさんは慌てていない。森の中心は静かなものだ。
きっと森の強者にとってはめずらしい食べ物が来たくらいのあつかいなのだろう。
(人族、見てみたいな。ダメもとでお願いしてみるか)
「おばさん。見に行ったら、ダメ?」
できるだけ大きく目を開き、可愛く言ってみる。
「おねえさんだといっているだろうに。……。もう森の近くに来ているね。何かあってもまわりの者たちが助けてくれるだろう。けど、近寄っちゃダメだよ。遠くから見なさい」
おねだり成功だ!
人族ってどんな姿なんだろう。おいしいって話は聞いている。
遠いけど、がんばって飛ぶぞ!!
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