第38話 スイーツバイキングに行く

 今日は紫都香さんとスイーツバイキングに行く予定があったので朝早く起きて行動している。


「十時からだよね、スイーツバイキングの予約」


「そうですね、九時の電車に乗って九時半にお店に着くつもりです」


「予約してくれてありがとう」


 休日にしてはいつもより早めの朝食を取りながら今日の予定について軽く話す。


「俺も甘いもの好きだったんで気にしないで下さい。それと、スイーツバイキングの後は紫都香さんに服とか選んで欲しいんですけど……」


 俺は実家に居た時、家族や有佐に選んでもらっていた。

 俺は自分で服を選んで買えるほどのセンスは持ち合わせていないので夏服を選ぶ手伝いを紫都香さんにして貰おうと頼むことにした。


 ただ俺に似合う服を紫都香さんに選んでもらいたかったという気持ちもあるが……。


「も、もちろん選ぶよ!」


 会話は朝食と同時に終わり、支度を済ませて家を出た。


 この間のデートから日が経っているので俺と紫都香さんの仲も日々の中で深めることが出来た。

 そのこともあって、この前のデートの日は普通に手を繋いで歩いているだけだったのが今では恋人つなぎというワンステップをすっ飛ばして腕組みをしながら歩いている。


 最初、紫都香さんと腕を組んだ時はお互いに照れていたが時間の経過とともに慣れた。


 駅に着いた。改札を通るのに腕を組んだままでは通ることは出来ないので切符販売機の辺りから腕組みを崩し、駅のホームへ向かった。


 出勤ラッシュの時間帯から少しずれた時間の電車に乗る。人はそこまで多くなく、席にも座ることが出来た。


 スイーツバイキングを行っているお店に着いたので予約画面を開いて店員に見せる。

 店の中には色々な種類のケーキやチョコレートフォンデュなど見ただけで甘い。と思わせるものが並んでいた。


「紫都香さんが先に取りに行きますか?」


「え、えっと……悠くんが先に取って来て良いよ。わたしは何を取るか決めてないし、待ってる間に何かしら考えておくから」


「分かりました」


 俺は紫都香さんを置いてスイーツを取りに行った。


 まずは俺の好きなケーキがどれくらいあるのかを物色する。ショートケーキ、チーズケーキ、ガトーショコラ……目を移していくとケーキが置いてある隣に見えたプリンに目が釘付けになった。


 一種類ではなく牛乳プリンやカスタードプリン、その他にも今までに見たことがないプリンも中にはあった。


 ケーキを取りに来たつもりだったが、気が付くとトレーに乗るお皿の上にはプリンが数種類置いてあった。


 ケーキの口になっていたがプリンでも悪くないと思いながら席に戻った。


 紫都香さんは俺が持って来たプリンだけを乗せたトレーを見て一瞬『え……』と声を漏らして絶句してしまった。


「珍しいプリンが置いてあったからつい取ってしまって……」


「そ、そうだったんだね!! てっきり悠くんがケーキはあんまり好きじゃなくてプリンしか食べられないのかなって一瞬思っちゃった」


 確かに俺は甘いものが好きと言っただけでケーキを好きだと紫都香さんに伝えたことは無かった。


「安心してください。この後ちゃんと好きなケーキも食べますから。それじゃあ紫都香さんも取って来ていいですよ。俺、座っておきますから」


 俺がそう言うと紫都香さんは立ち上がって『じゃあ行ってくるね!!』と言い残してスイーツを取りに行った。


 紫都香さんがケーキやらプリンやらを万遍なく取って戻って来たところで食べ始めた。


 俺が取って来たプリンは上にホイップクリームが乗っているもの、プリンの上辺が本の少し硬くなっているもの、カラメルが無いもの、様々なものがあった。


 紫都香さんもプリンを取って来ていたのでプリンの感想を言い合った。


 俺は持って来たプリンを完食したところで俺は紫都香さんに『次はケーキを取って来ます』と言ってケーキを取りに行った。


 ケーキもたくさん種類があった。俺が一回目に取りに来ていた時に見ていたものとは真反対の方、背中側にもケーキが置かれていた。


「レモンケーキ、とかもあるんだぁ……」


 隣でケーキを物色している人の声が聞える。

 どうやらこっちはショートケーキなどの王道のケーキではないものが多く置かれているようだった。


 俺は今日初のケーキだったので王道のケーキをまずは幾つか取って席に戻った。


 紫都香さんはまださっき取って来ていたものを食べていたので一緒に食べる。


「紫都香さんはどのケーキが一番好きですか」


「わたしは、ショートケーキが好きだよ。イチゴが乗ってて美味しいんだよね」


 食べながらお互いの知らない所を埋めるかのように話を続けた。


 あまり食べ過ぎてもこのあと動くのがつらくなると思い、キリの良い所でお会計をしてスイーツバイキングを出ることにした。

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